ポストFITの太陽光発電

DSC03499 6月23日(火)と24日(水)の両日、つくば国際会議場において「AIST太陽光発電研究成果報告会2015」が開催されました。
 国立研究開発法人となった産業技術総合研究所(産総研:AIST)は、この4月から第4期の中期計画期間に入り、これに伴い太陽光発電工学研究センター(2011年発足)は、名称を太陽光発電研究センターに変更しました。

 同センターでは、開発した技術の実用化や産業界への橋渡しをより一層意識して研究開発を行なうとともに、産総研独自の研究シーズの探索と育成、将来の我が国の太陽光発電を担う人材育成にも注力するとしています。また、福島再生可能エネルギー研究所(FREA)の再生可能エネルギー研究センターとの連携を強め、一体的に太陽光発電の研究開発を実施していく計画です。
 具体的な研究としては、我が国の太陽光発電ロードマップ(NEDO PV Challenges)のコスト目標である7円/kWhを実現するために、各種太陽電池の高性能化やモジュールの信頼性向上に取り組むとのこと。この他、太陽電池の評価・校正技術の高度化、故障解析、安全基準の策定等、共通基盤的技術開発を行なうとしています。
 新しく変わったセンターの研究で注目したいのは、半導体光電極や光触媒を用いた人工光合成技術に関する開発テーマが機能性材料チームに追加されたこと。さらに、有機系薄膜チームが話題のペロブスカイト太陽電池における新規材料の探索や塗布法による高効率・低コスト化に向けたプロセス開発に一層注力する点といったところでしょうか。

 初日の特別講演では、経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー対策課の松山泰浩課長が「再生可能エネルギーの導入拡大と今後の課題について」を、新エネルギー・産業技術総合開発機構新エネルギー部太陽光発電グループの山田宏之主任研究員が「太陽光発電開発戦略と新しいプロジェクトの概要」を報告、招待講演では、資源総合システムの一木修代表取締役が「新たなサイクルに入る太陽光発電-FITを乗り越えて-」を講演しました。
 成果報告では化合物薄膜太陽電池、有機系太陽電池、超高効率化技術、モジュール技術、評価技術、システム技術、人工光合成技術等に関する最新の研究開発事例が紹介されたほか、初日後半と二日目にかけ合計12本のトピックス講演が行なわれ、特別トピックス講演としては「産総研メガ・ソーラタウン全数調査の結果速報」が紹介されました。

 FITによる太陽光発電施設の急増による系統連携の問題や買い取り価格見直しによる導入量の減少が予想されるなか、ポストFITへの対応は重要な課題とされています。
 今回の報告の中では、FIT導入前の太陽光発電が持っていたエネルギー問題や環境問題を解決するという社会規範が、FIT導入によって金儲けのための経済規範に変質してしまい、その果てに何時か大きな事故が起きるのではないかとの警鐘も聞かれました。
 確かに、FITによって20年という時間的な猶予は得られましたが、いつまでもFITに頼ってはいられません。与えられた20年で太陽光発電が自立した産業に育つことができ、今後の100年を支えるエネルギー源になれるのか。太陽光発電はまさに、売るためのエネルギーから使うためのエネルギーに変わっていく必要があるでしょう。自家消費型で地産地消型のエネルギーになれるのか。重要な鍵を握っているのは、低コスト化を実現する技術開発だということは言うまでもありません。

編集顧問:川尻多加志

 

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