今年を国際光元年に!

会場風景 12月11日の金曜日、東京大学・安田講堂において「国際光年総括シンポジウム-光の科学と技術の新たな飛翔に向けて-」が開催されました。

 イブン・アル・ハイサムの光学研究から1,000年、マクスウェルの光電磁波説から150年、アインシュタインの一般相対性理論から100年、そしてカオの光ファイバ提唱から50年と、今年は光にとって節目となる重要な年でした。そこで、国連は2015年を国際光年(光と光技術の国際年)と定め、これに合わせた様々なイベントが世界各国で開催されました。
 我が国においても4月、同じ東大・安田講堂において1,100人以上が参加して国際光年記念式典が開かれましたが、この他にも各学会を始めとして多くのイベントが行なわれました。

 今回のシンポジウムは、日本学術会議総合工学委員会ICO分科会の主催、国際光年協議会、国立研究開発法人・科学技術振興機構の共催で行なわれたもので、2015年の終了に当たって国際光年の総括と今後の活動を展望するとともに、光の夢と魅力を改めて市民に広く伝えることを目的に開かれました。事前登録は1,300人弱にも及んだとの事です。

荒川東大教授 シンポジウムは先ず、ICO会長で東京大学の荒川泰彦教授の開会挨拶で幕を開け、日本学術会議会長で豊橋技術科学大学の大西隆学長が、日本学術会議を代表して挨拶を述べました。
 続いて行なわれたのが各学会の報告。応用物理学会の河田聡会長、電子情報通信学会の小柴正則会長、日本物理学会の藤井保彦会長、レーザー学会の加藤義章会長、日本光学会の黒田和男会長等、我が国を代表する光関連主要学会の会長がその取り組みについて報告、最後はSPIEの谷田貝豊彦会長が活動報告を行ないました。谷田貝会長はその中で「ユネスコの中で最も成功したイベントであった」というユネスコ技術部門の担当者の声を紹介していました。

赤﨑名大特別教授 その後、休憩を挟んで行なわれたのが三本の記念講演。先ずは昨年ノーベル物理学賞を受賞した名古屋大学特別教授、名城大学終身教授の赤﨑勇氏が特別記念講演として「光と私の研究」を、続く記念講演は建築家で東京大学名誉教授の安藤忠雄氏が「光と建築」、東京大学教授の村山斉氏が「光と宇宙」と題する講演を行ないました。

 赤崎特別教授は、GaNを用いた青色発光素子の研究を振り返って、鍵は結晶成長と確信したと述べるとともに、研究は「How」より「What」が大事だと述べていました。また、通産省の未踏革新技術プロジェクトにご自身のテーマが採用された時は、NECの林巌雄氏が提案していたSHG素子を用いた方式も同時に採用された事を紹介。この二つのテーマを採用したのは田中昭二氏と櫻井健二郎氏で、両氏は二つとも非常に難しいが重要な研究であり、どちらかでも成功すれば、という思いだったらしいという裏話を紹介しました。

 一方、安藤氏はユーモアを交え、ご自身のこれまでの仕事を紹介するとともに「日本は創造的国家にならなくてはいけない。それにはもっと教育に力を入れるべきである。学生は全力で体験をすべきで、もっと好奇心を持つ必要がある」と力説。村山氏は、宇宙の成り立ちや宇宙が何で出来ているのかを非常に分かりやすく説明して、光を使って宇宙を調べれば「行かなくても宇宙を研究できる」と述べていました。

 そして、シンポジウムの最後は日本学術会議第三部長で東京大学副学長・教授の相原博昭氏が閉会の挨拶を行なって、今回のイベントを締め括りました。

 国際光年の国内イベントはこれで終了というかたちになりますが、来年2月にはメキシコにおいてクロージングセレモニーが行なわれます。開会挨拶で荒川教授が述べていたように、これで国際光年は終わりというのではなく、2015年を「国際光元年」として、今後ますます発展させて行かなければならないと感じた一日でした。

 最後になりましたが、本年中は大変お世話になりました。来年もよろしくお願い申し上げます。皆様、良いお年を!

編集顧問:川尻多加志

 

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