今年もやっぱり光年!

 日本フォトニクス協議会(JPC)の新春特別フォーラムが1月15日の金曜日、東京は神楽坂の東京理科大学・森戸記念館で開催されました。
 JPCは、様々な光分野における有識者・研究者・技術者と光関連機関・団体に関係する人々が連帯・連携して、光技術に関するアイデアやノウハウ、教育システム、生産技術、デバイス技術を結集させ光技術に携わる人材育成を行うとともに、新たな光技術と光ビジネスを創成、国際間の学術交流の活性化にも貢献して、我が国先端技術による産業・企業・教育の普及・発展に寄与するため設立された特定非営利活動法人。

羽鳥JPC理事長

羽鳥JPC理事長

 傘下に産業用LED応用研究会や紫外線研究会、関西支部のJPC関西などを持ち、これまでにも光ビジネスや技術動向に関する定例セミナーなどを開催してきました。

 主催者によれば、今回の講演会には約80名、その後の賀詞交歓会には約100名が出席。先ずJPC理事長の羽鳥光俊氏が開会の挨拶(年頭の辞)を行ない、引き続きお三方による招待講演が行なわれました。

伊賀東工大前学長

伊賀東工大前学長

 トップバッターは、東京工業大学・前学長の伊賀健一氏。 「面発光レーザーフォトニクスの新展開」と題する講演の中で、世界で初めてレーザー発振を成功させたメイマン氏について、連続発振ではなくパルスで発振させたことは固定概念を打破したもので、イノベーターであると評価。
 面発光レーザーの研究の歴史や応用展開を紹介しつつ、ご自身が如何にして面発光レーザーを着想したかについては「将来どういうものがあったら良いか」を念頭に置いたとのこと。講演最後には、科学の役割として「発見・解明」、「創造から生産へ」、「安らかな社会を実現させる」の三つが大切と締め括りました。

 続いての講演は、東京大学・教授の合田圭介氏による「先端光技術によるセレンディピティの計画的創出」。ご自身がプロジェクトマネージャーを務める革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「セレンディピティの計画的創出による新価値創造」を紹介しました。
 「セレンディピティ」とは、偶然の幸運や予知しないものを発見する能力のこと。1兆個以上の多種多様な細胞群から、圧倒的性能を有する稀少細胞を超高速・超正確に探索する技術を開発して、体内に油脂を作る能力が現在の20倍というスーパーミドリムシを創ったり、超高精度な血液検査技術を実現するとのことです。まさに、大発見を偶然のものから必然のものにするというものです。
 光学撮影における感度と速度を両立させたSTEAM(連続時間符号化振幅顕微鏡法)カメラを開発、世界最速の連続撮影が可能な超高速自動顕微鏡の実現に成功しました。会田氏は「イノベーションという言葉はもはや死語。これからはセレンディピティの時代だ」と強調していました。

 招待講演最後の産経新聞東京本社・編集局編集長の島田耕氏は「日本経済の2016年を占う」と題する講演の中で、個人的見解と断りながらも、今年の日本経済は非常に厳しいものになるだろうと予測。日本経済はアベノミクスによって上昇基調にあるものの、中国経済の低迷などの外的要因に振り回される懸念があるとのことです。
 また、鍵を握る個人消費が伸びていないとも指摘。アベノミクスの想定外としては、輸出が思ったほど伸びない、昨年4月の消費増税が予想以上に消費に悪影響を与えた、賃上げが大企業以外へ波及するのに時間がかかっているとの3点を挙げました。島田氏は最後に、日本には金融工学による錬金術を使うような国ではなく科学技術立国、製造業立国になってほしいと述べていました。

 招待講演終了後は、光産業関連団体代表による年頭スピーチが続きます。

 光産業技術振興協会・専務理事の小谷泰久氏は、私見と断りながらも光産業も勝ち組と負け組みに分かれるのではないかと述べ、レーザー加工やイメージセンサーなどの他、太陽光発電分野ではパネルではなくシステム、LED照明分野でも素子ではなく器具等を勝ち組に挙げていました。
 また、新しくスタートした、データセンター内のフォトニックスイッチングに関する「次世代フォトニックススイッチングノード技術の調査研究」と、サーバーにおける光エレクトロニクス実装技術に関するNEDOの実用化10年プロジェクト「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」を紹介、このプロジェクトの途中でも(できれば今年にでも)製品化に持って行きたいと述べていました。

 日本光学会・会長の黒田和男氏は、今後X線やバイオまで領域を拡げて会員を増やして行きたいと述べ、昨年の国際光年に関連して、実は今年がフレネルが回折現象を明らかにしてから200年、アインシュタインの誘導放出理論の発表から100年に当たるとして、今年も光年であると述べていました。

 レーザー学会・会長の加藤義章氏は、産業界と連携をより強くするとともに、女性会員を増やしたいと抱負を述べました。さらに、日本の研究は良い成果を出しているにも関わらず、必ずしも国際的に認知されていないと指摘、その向上のためにも今年5月にパシフィコ横浜で開催される国際学会OPICを海外との連携媒体として成功させたいとしていました。

 最後に登壇したJPC関西・支部運営副委員長の豊田周平氏は、これまでの関西支部の活動を紹介しつつ、昨年10月に発足させた新しい分科会「アグリバイオフォトニクス産業化研究会」の概要も紹介しました。

天野名大教授

天野名大教授

 この後、会場を移して行なわれた賀詞交換会のハイライトは、何といっても2014年にノーベル物理学賞を受賞した名古屋大学・教授の天野浩氏(JPC理事)が、特別ゲストとして超多忙の中駆けつけ挨拶をされたということでしょう。JPCから記念品が贈呈されました。

 この他にも、招待講演者を代表して伊賀健一氏、板橋区産業経済部長の細井榮一氏、メディカルイメージングコンソーシアム副理事長の谷岡健吉氏、光学薄膜研究会・代表の室谷裕志氏、可視光半導体レーザー応用コンソーシアム代表の山本和久氏、JPC理事の森戸祐幸氏、経済産業省・製造産業局・産業機械課長の佐脇紀代志氏、JPC産業用LED応用研究会委員長代行の本田徹氏などが登壇、今年にかける夢と抱負を述べ、約2時間という時はあっという間に過ぎて行きました。

編集顧問:川尻多加志

 

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