光加工・計測技術のインパクト

第31回櫻井健二郎氏記念賞受賞者 (前列左から)小林功郎記念賞委員長代理、平野正晃氏、佐藤俊一氏、小谷泰久専務理事 (後列左から)川口雄揮氏、田村欣章氏、山本義典氏、 軸谷直人氏、原坂和宏氏、伊藤彰浩氏

第31回櫻井健二郎氏記念賞受賞者
(前列左から)小林功郎記念賞委員長代理、平野正晃氏、佐藤俊一氏、小谷泰久専務理事
(後列左から)川口雄揮氏、田村欣章氏、山本義典氏、 軸谷直人氏、原坂和宏氏、伊藤彰浩氏

 我が国のもの作りを支える光加工技術にいま、3Dプリンターや精密微細加工技術を用いた新たな展望が拡がろうとしています。また、光計測技術の医療・健康、宇宙分野等への応用は新しいイノベーションを生み出すと各方面より注目が集まっています。

 そんな中、リーガロイヤルホテル東京で2月3日(水)に開かれた「光産業技術シンポジウム」(光産業技術振興協会と光電子融合基盤技術研究所の共催)。
今年のテーマはまさに「光加工・計測が創る新たな社会と産業イノベーション」で、太陽系外惑星検出、3Dプリンター、X線自由電子レーザー(XFEL)やパワーレーザーの超小型化といった光加工・計測技術の最新の情報と将来展望が紹介されるとともに、ICTの鍵を握る光電子集積技術に関しても、その最新動向と将来展望が紹介されました。当日のプログラムは以下の通りです。

◆開会挨拶:光産業技術振興協会 専務理事 小谷泰久氏
◆来賓挨拶:経済産業省商務情報政策局デバイス産業戦略室 室長 田中邦典氏

<基調講演>
太陽系外惑星直接検出のための技術開発
   室蘭工業大学 理事・副学長 馬場直志氏

<招待講演>
3Dプリンターとその最新動向
   アスペクト 代表取締役社長 早野誠治氏
超小型パワーレーザーの開発と産業への応用
   内閣府革新的研究開発推進プログラム(ImPACT) プログラム・マネージャー 佐野雄二氏
光テクノロジーロードマップ~光加工・計測技術
   レーザー技術総合研究所 主席研究員 藤田雅之氏
光電子集積技術に関する開発動向及び技術ロードマップ2015
   新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 統括研究員 吉木政行氏

<講演>
超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発
 ~アクセスネットワーク向けシリコンフォトニクス

   光電子融合基盤技術研究所(PETRA) 佐々木浩紀氏

 以下、内容を簡単に紹介しますと「太陽系外惑星直接検出のための技術開発」を講演した室蘭工大の馬場氏は、地球型惑星の直接観測には地上においても宇宙空間においてもハイ・コントラストな撮像法が求められ、その実現には極限補償光学、広帯域・ハイスループット化、ハイパー望遠鏡の建設が重要と述べました。

 「3Dプリンターとその最新動向」を講演したアスペクトの早野氏は、Additive Manufacturing(AM)技術の応用、用途、装置の潮流、取り巻く環境と市場動向、日本の技術と政府の取り組みを解説。1990年に3,000社が登録されていた木型工業会のメンバーが2015年には74社になってしまったと指摘して、今後どう生き残るのかを考えるべきだと述べていました。

 「超小型パワーレーザーの開発と産業への応用」を講演したImPACTの佐野氏は、現行700mのXFELを10mにするという目標を掲げ、ベンチマークと開発目標の具体化、海外への広報戦略、将来展開を含めたロードマップの作成が今後の課題と指摘。超小型パワーレーザーにおいては、高出力パルスレーザーを日本に復活させるとして、ベンチャー設立を含め技術移管およびシステム化・製品化戦略とユーザーとの連携による応用発掘と実用化推進が重要と述べました。

 「光テクノロジーロードマップ~光加工・計測技術」を講演したレーザー総研の藤田氏は、2030年社会における光加工・計測、光医療の姿を想定した上で、その夢はいつでも・どこでも・何でも3Dプリンターと痛くない光診断・治療の実現と述べていました。

 「光電子集積技術に関する開発動向及び技術ロードマップ2015」を講演したNEDOの吉木氏は、2015年時点では光電子集積技術を搭載するアプリケーションはスパコンやデータセンター、サーバーのフロア間からラック間の光リンクの一部にしか用いられていないが、2030年にはその搭載範囲は飛躍的に拡大、市場の50%を占めるだろうと予想しました。

 「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発~アクセスネットワーク向けシリコンフォトニクス」を講演したPETRAの佐々木氏は、アクセスネットワークシリコンフォトニクスの中において、GE-PON ONU向け光トランシーバーの要素デバイス開発(双方向波長合分波フィルター、スポットサイズ変換器、Ge-PD、利得結合型DFB-LD)と集積トランシーバー開発を紹介、さらにTWDM-PON ONU向け光トランシーバーの要素デバイス開発として、双方向波長合分波フィルターと消光比25dBのAWGを紹介しました。

 シンポジウム終了後には恒例の櫻井健二郎氏記念賞表彰式が行なわれました。第31回を迎えた今回の櫻井健二郎氏記念賞は、リコーの「レーザプリンタ用面発光レーザアレイの開発および実用化」と住友電気工業の「海底ケーブル用極低損失光ファイバの開発と実用化」に贈られました。
 受賞者はリコーがリコー未来技術研究所の佐藤俊一氏(技師長)、軸谷直人氏(シニアスペシャリスト)、原坂和宏氏(スペシャリスト)、伊藤彰浩氏(シニアスタッフ)の4名。住友電気工業が平野正晃氏(光通信事業部主席)、山本義典氏(光通信研究所主査)、田村欣章氏(光通信研究所)、川口雄揮氏(光通信研究所)の4名です。それぞれに表彰状、メダル、副賞が授与されました。

 リコーは、レーザプリンタ用書込み光源の開発に取り組み、高利得のGaInPAs/AlGaInP 歪量子井戸構造活性層、AlAs主体の高熱伝導率反射鏡、安定なモード・偏光特性のための高次モード抑制フィルター、均一な素子特性のための面発光レーザ素子レイアウトなど、独創的技術の開発によって世界最高出力および高信頼の面発光レーザアレイの実現とその実用化に成功しました。この面発光レーザアレイは、プロダクションプリンタに搭載され、高速かつ4800dpiという世界最高の解像度を達成して新しい印刷市場を切り拓いたことが評価されました。
 一方の住友電気工業は、世界に先駆けて純シリカコアファイバを開発し、さらにそのレイリー散乱を低減することにより、伝送損失が最小0.149dB/km、平均0.154dB/km と、研究、製品それぞれのレベルで世界記録を更新。本技術により製品化された極低損失光ファイバは、複数の国際大洋横断光ファイバ通信プロジェクトに採用され、海底光通信システムの性能向上に大きく貢献したことが評価されました。

編集顧問:川尻多加志

 

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