JASIS 2016に見るラマン顕微鏡

 9月7日(水)から9日(金)までの3日間、幕張メッセにおいて分析機器・科学機器総合展示会「JASIS 2016」が開催されました。展示会は出展社数も多く、非常に多岐にわたる分析機器・科学機器が出展されていました。光を応用した各種の測定・検査機器も非常に多く見受けられました。各社をざっと見て回るだけでも到底一日では無理という感じです。そこで、今回はラマン顕微鏡に的を絞って会場を歩いてみました。取材の後半、かなりばててしまったので見落としがあったらすみません。

(1)ナノフォトン◆ナノフォトン
 同社の新製品「RAMAN force」は顕微鏡を一体化。10倍、20倍といった低倍率対物レンズの空間分解能を限界まで向上させたとのこと。もちろん100倍での350nmという空間分解能は健在。室温の影響を受けにくい新構造ボディを採用して、画像ボケの原因となる測定中の試料ステージのドリフトをさらに軽減、1℃の環境温度変化に対するフオーカスのずれを50nm以下とした。独自のライン照明技術と高画素・電子冷却CCDを用いた400本のラマンスペクトル同時検出の採用によって、点照明とステージ走査を組み合わせた方式に比べ、数百倍という超高速ラマンイメージングを実現した。新開発の多機能ソフトウェアで分析スピードもさらにアップした。

(2)レニショー◆レニショー
 「inVia Qontor共焦点ラマンマイクロスコープ」に採用されている同社独自のリアルタイムフォーカストラッキング機能「LiveTrack」は、サンプルステージの高精度モーションコントロールに新規の光学テクノロジーを統合、サンプル観察や測定中にサンプルステージの高さを継続的に調節することでフォーカスを維持する。手間がかかって位置合わせが難しいプレスキャンが不要で、対物レンズでフォーカスを維持する方式に比べ、広い高さ範囲でのフォーカスが可能とのことだ。これにより、マニュアル操作での観察中もフォーカスが維持でき、曲面や粗面のサンプルも簡単に分析ができるという。さらに、サンプル加熱や冷却などのダイナミック測定や長時間にわたる観察中に環境が変化する場合でも、フォーカスの維持が可能になった。

(3)堀場製作所◆堀場製作所/堀場エステック
 顕微レーザーラマン分光測定装置「LabRAM HR Evolution」の測定波長域は、紫外から近赤外まで(200nm~2100nm)と広く、焦点距離800mmで高いスペクトル分解能を実現する高性能大型分光器を採用した。自動光軸調整機能も付いていて、0.5μm以下という高分解能を有している。一定のデータを保持してまとめて転送することでデッドタイムを省く超高速イメージング機構「SWIFT」や、可視光だけでなく深紫外から赤外までの波長領域でマッピング測定するイメージング機構「DuoScan」で3次元高速マッピングを実現したとのことで、レーザーやフィルター等の光学系をソフトウェアからコントロールする自動切替機構も搭載。豊富なアクセサリー装備が可能で、RAMAN-AFMやフォトルミネッセンス、透過ラマン、加熱冷却ステージ等、他のシステムと合わせた複合機を実現できる。

(4)サーモフィッシャーサイエンティフィック◆サーモフィッシャーサイエンティフィック
 同社の「DXR2」シリーズは、光軸を自動調整するオートアライメント・キャリブレーション機構(特許技術)を採用、励起レーザーからサンプル、サンプルから検出器までの二つの光軸を自動で最適化して、スペクトルの横軸・縦軸の校正も同時に実施できる。直感的でシンプルな操作性を有する「OMNIC」ソフトウェアによって、自動露光やスマートバックグラウンド、オートフォーカスなど、パラメーターを自動で最適化してくれるので、これまでシステム調整に必要とされていた熟練の技が不要になったとのこと。蛍光を発するサンプルに弱いというラマン分光法の弱点も、レーザー照射によるフォトブリーチング(蛍光退色)効果によって、その影響を軽減できる。オプションで偏光子と検光子を装置内に組み込むことができ、偏光測定も可能だ。

(5)東京インスツルメンツ◆東京インスツルメンツ
 同社の「Nanofinder FLEX」は「Nanofinder 30」3D顕微レーザーラマン分光装置の基本性能を備えた汎用品で、各ユニットをモジュール化したもの。ラマン光学ユニットは大幅に小型化して従来比1/6を実現、A4サイズで正立顕微鏡の上部に搭載する方式なので、設置床面積は光学顕微鏡1台分で済む。その他のユニット、レーザーと分光器/冷却CCD検出器も光ファイバーで接続するため設置場所を選ばない。励起レーザーを交換する時はラマン光学ユニットを交換するが、顕微鏡への取付は簡単とのこと。高空間分解能は300nm以下、十分な高感度を有し、操作性においても光学、光軸調整等は必要なく簡単に使用できる。ラマン光学ユニットおよびピエゾステージのコスト削減で装置全体価格の大幅な低価格化に成功した。ユーザーが手持ちのレーザーや冷却CCD/分光器を使用できるので、購入予算の一層の低減が可能としている。

(6)ニューメタルスエンドケミカルスコーポレーション◆ニューメタルスエンドケミカルスコーポレーション
 同社の「uRaman-M」は柔軟性の高いラマン分光器。低価格・コンパクトでありながら、ニコン、オリンパス、ライカ、ツワイス社製といったほとんどの正立顕微鏡に簡単に取り付けることができ、ハイエンドのラマン顕微鏡に劣らない高いラマン分析が可能とのこと。蛍光観察などの既存のイメージング機能に影響を与える心配もない。周波数安定化レーザーと高感度リニアアレー検出器を標準装備、用途に応じ532nm、633nm、785nmの3種類のレーザー波長が用意されていて、それぞれの分光器を重ねて組み込むことも可能だ。

(7)WITec◆WITec
 同社の共焦点ラマン顕微鏡「alpha300R」はフォトニックファイバーを用いた高S/N共焦点光学系と高スループットレンズ方式の分光器を組み合わせたラマン分光イメージングシステム。励起レーザーは532nmが標準で355nm~785nmまで対応、最大3光源まで切り替えることが可能だ。分光器の焦点長は300mm~600mmのレンズ方式で最大3グレーティング。明視野、暗視野、微分干渉、偏光観察に対応する。同社では、AFMを組み込んだ共焦点ラマン顕微鏡「alpha300AR」も扱っており、表面形状像とラマンイメージングによって資料評価の幅を広げて、様々なアプリケーションに対応する。

編集顧問:川尻多加志

 

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