光メモリの生きる道

 5月10日から12日までの3日間、東京ビッグサイトで「データストレージ EXPO」が開催されました。この展示会は「Japan IT Week 春 2017」を構成する複数の展示会の内の一つで、規模はそれほど大きくないのですが、当然光ディスクも出展されているだろうと、行ってきました。
 光ディスクは、パソコンやスマホなどに使われているハードディスクや半導体メモリの影に隠れて、最近ではあまり目立たない存在になっているようです。個人的には少し寂しい感があるのですが、一方でその長期保存性が買われて、データセンターなどにおいて、普段あまりアクセスしないコールドデータを保存したり、放送局などのアーカイブ用に結構使われています。会場を歩いて見つけた光ディスク・システムを紹介します。

ソニー ソニーのオプティカルディスク・アーカイブは、堅牢性が高い複数枚の業務用光ディスクを格納したカートリッジと、これを制御する高速ドライブからなる光ディスクストレージシステムです。2012年の発表以来、放送・業務用映像アーカイブを中心に、金融機関、教育・研究機関などに採用されているそうです。
 ディスクには、パナソニックと共同開発した業務用次世代光ディスク規格「アーカイバル・ディスク」を採用しています。その進化は現在第2世代に入っていて、両面合計6層構造とランド&グルーブ方式による高密度化で、1枚当たり300GBの光ディスクを11枚を収容してカートリッジ1枚で3.3TBという大容量化を実現しました。
 高速化については、8チャンネル光学ドライブを搭載したユニットを新たに開発。これは、表裏4個ずつ合計8個のレーザーヘッドでディスクの両面を同時に読み書きするというもので、読み出し転送速度2Gbps、書き込み転送速度1Gbpsを実現しています。ちなみに「アーカイバル・ディスク」の第3世代では容量が5.5TB、読み出し転送速度3Gbps、書き込み転送速度は1.5Gbpsになるそうです。
 長期保存性についても、第1世代が50年以上だったものが、第2世代では100年以上に伸びています。ライブラリーの拡張性については、カートリッジを30巻搭載する99TBタイプから535巻を搭載する1.7PBタイプまで、柔軟にシステムの拡張ができるとのことです。無通電でカートリッジを管理できるので、1.7PBのストレージをわずか700W程度の消費電力によって管理でき、大幅なトータルコスト削減を実現できるということです。
 同社では、ロボットを使ったさらに大規模な光ディスクライブラリーシステム「EVERSPAN」の技術紹介も行なっていて、光ディスクに注力する姿をアピールしていました。

三菱ケミカルメディア 三菱ケミカルメディアは、パイオニアと共同でアーカイブ用光ディスクと光ディスクライブラリーを出展しました。両社は、光ディスクアーカイブシステムを推進するために2012年、推進団体「OPARG」を設立しています。
 光ディスクの開発・製造を担当する三菱ケミカルメディアの業務用ブルレイディスク(BD)は、第三者機関であるADTC(アーカイヴディスクテストセンター)によってBD-Rの100GBモデルで推定寿命200年以上という評価を得たとしています。耐久性についても、1週間の海水浸漬試験でデータ再生が可能であることを確認しているそうです。一方のパイオニアが開発した光ディスクアーカイブシステムは、この光ディスクとRAID(安価で低容量なハードディスクを複数使った補助ストレージ装置)を組み合わせたものとなっています。

ユニテックス この他、ユニテックスはLTO(Linear Tape Open:コンピューター用磁気テープのオープン規格)装置を展示する傍ら、CD/DVDディスクパブリッシャーも出展していました。ヘッドを変えることでBDも使用できるというもので、データの書き込みからレーベル印刷までを100~200枚連続高速処理ができるそうです。
 
 

 音楽や動画などをパッケージメディアで楽しむ人は、以前よりだいぶ少なくなりました。その結果、光ディスクはメモリーにおける主役の座を譲った感もありますが、一方で長期信頼性というような特長を活かした適用分野において、決して派手ではありませんが、とても重要な役割を果たしています。

編集顧問:川尻多加志

 

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