レーザーで綺麗に

DSC05257 先日、東京ビッグサイトで開催された「2017 防災産業展 in 東京」で、ちょっと面白いものを見つけました。レーザークリーニング装置のヘッド部分で、展示されていたのは鈴与建設とフォーカス・エンジニアの共同ブース。装置を開発したのはトヨコーという会社で、フォーカス・エンジニアはトヨコーと鈴与建設が共同出資して設立したレーザークリーニング工法による構造物の施工事業を行なう会社です。
 
 塗膜や錆の除去には、これまで対象物にケイ素を吹きつけてクリーニングを行なうブラスト処理や剥離剤による方法が用いられてきました。しかしながら、これらの方法では産業廃棄物が出て処理コストが高額になってしまったり、複雑に入り組んだL字部分やボルトの付け根等では処理に時間がかかってしまうという問題がありました。また、ブラスト処理を行なうと塗膜や錆と同時に下地まで削り取ってしまうので、対象物が傷ついてしまうという問題もありました。

 これに対しレーザークリーニング工法は、レーザー光を直接照射するため、入り組んだ部分に対してもスムーズに短時間で作業ができ、塗膜や錆を溶融・蒸散させながら微粒子を集塵機に吸い込むことで産業廃棄物の発生量を抑え、処理コストを大幅に削減できます。また、瞬時に高温・高圧で一気に除去するので下地を傷めることがなく、除去後に形成される安定酸化被膜による防錆効果で対象物を延命させることもできます。工場内の大型設備の錆取りなど、耐用年数が気になる設備のクリーニングに適しているというわけです。

 同社のレーザークリーニング装置「CoolLaser」はハンディタイプで、ファイバーレーザーの光をヘッド部分で特殊なプリズムに透過・屈折させ、高速で回転させることで円形に照射するという仕組みになっています。これをスライドさせることで面照射を可能にしました。反力が発生しないので女性でも作業ができ、ロボットを使った作業なども行ないやすくなるということです。廃棄物はブラスト処理に比べ100分の1以下とのことです。

 同社は、平成20年から光産業創成大学院大学の藤田和久教授と沖原伸一朗准教授との共同研究をスタートさせたそうです。
 現状ではCWレーザーを用いていますが今後、パルスレーザーを利用して熱ひずみを減らし、版金など薄物への対応や、周波数を変えてカーボン素材表面にダメージを与えないレーザー除去、水中透過率の高いレーザーを用いた海洋土木の表面クリーニングや造船への適用など、その可能性を拡げて行きたいとしています。 
 また、浜岡原子力発電所1号機と2号機の廃炉に向けた二次廃棄物、遠隔操作、処理速度、粉塵飛散防止に関する技術開発を、中部電力、光産業創成大学院大学と共同で進めていて今後、装置の具体化に向け開発を行なっていく計画もあるそうです。

 実用化に関する今後の課題は、レーザー施工現場を念頭に置いた装置や作業面での安全性の確立とのことです。膨大な費用がかかると言われる老朽化した日本のインフラへの適用など、レーザークリーニング技術の進展に注目したいと思います。

編集顧問:川尻多加志

 

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