シリコンフォトニクスが越えるべき課題

 データ伝送量の爆破的増大によって、既存の技術ではデータセンターや光通信ネットワークシステムは近い将来、限界を迎えると言われています。そこにブレークスルーをもたらすテクノロジーとして、今シリコンフォトニクスに多くの注目が集まっています。

 シリコンフォトニクスの展望と課題をテーマに6月16日、第9回フォトニクス・イノベーションセミナーが、東京大学・駒場リサーチキャンパスの先端科学技術研究センターで開催されました。主催したのは、東京大学・ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構で、今回のプログラム・タイトルは「シリコンフォトニクスの進展と展望」。人々の関心の高さを物語るかのように、会場には多くの人が詰めかけました。

 ナノ量子情報科学技術分野における研究・開発を先導してきた同研究機構は、これまでにも人材育成や成果普及活動として、ナノ量子情報エレクトロニクスに関する大学院講義の他、フォトニクス・イノベーションセミナーやフォトニクス・イノベーション・ビジョンワークショップなどを開催してきました。中でも、今回9回目を迎えたフォトニクス・イノベーションセミナーは学生・社会人を対象としたものと位置付けられています。

 今回行なわれた講演は2本。1本が産業技術総合研究所・電子光技術研究部門シリコンフォトニクスグループ長の山田浩治氏による「ポストムーア技術としてのシリコンフォトニクス」、もう1本は東京大学・大学院工学系研究科電気系工学専攻・准教授の竹中充氏による「異種材料集積を用いたSiフォトニクス」でした。何れの講演でも、シリコンフォトニクスの越えるべき課題と克服の可能性を秘めた研究開発の方向性が示されました。

産総研・山田浩治氏

産総研・山田浩治氏

 山田氏は、情報処理・伝送システムの基本構成要素であるエレクトロニクスとフォトニクスの両方にポストムーア技術が必要と指摘します。続けて、エレクトロニクスにおいてはすでにモアムーア、モアザンムーア、新原理デバイス/アーキテクチャーの三つのアプローチによるポストムーア技術の開発が活発に進められており、これらの技術開発はフォトニクスにおけるポストムーア技術にも適用できるし、特に技術的にエレクトロニクスの流れを汲むシリコンフォトニクスは、ポストムーア技術の開発に即効性ある解を提供するだろうと述べました。
 一方で、山田氏はポストムーア技術としてのシリコンフォトニクスの適用は1回限りで限界を迎えると指摘します。その理由として、シリコンフォトニクスは現実離れした要求加工精度や導波路システムの縮小限界など、本質的に解決が困難な技術的課題を抱えていることを挙げ、シリコンフォトニクス自身がすでにポストムーア技術を必要としていると述べました。
 山田氏は、結局は材料を変えない限り破綻すると警鐘を鳴らし、変調器や受光器などを形成した後の工程において、加工精度が緩くて済むシリコン・ナイトライド系(SiN/SiON/SiOx)の材料を用い、かつ低温で導波路層を形成できるバックエンドフォトニクスやプラズモニクス・デバイスの有用性を示して、講演を締めくくりました。

東大・竹中充氏

東大・竹中充氏

 2本目の講演者、竹中氏はボトムアップからシリコンフォトニクスを捉え、シリコンフォトニクスで何ができるのかを考察。ゲルマニウムや化合物半導体、さらにはグラフェンなどの2次元材料といった異種材料を、ウエハボンディングやエピタキシャル成長を使って電子デバイスと光デバイスへ応用した最新の研究開発事例を紹介しました。
 竹中氏は、異種材料集積技術はシリコンフォトニクスにおいて必須であり、今後ますます重要になるとした上で、これまで不可能だった機能を実現したり、難しかったレベルの集積化も実用化されると述べます。そして、すでにゲルマニウム結晶成長技術の進展によって、ゲルマニウム受光器やFK光変調器なども商用化されており、ウエハボンディングを用いた、より高品質なゲルマニウム薄膜の集積化も可能だと指摘しました。
 さらに、ウエハボンディングによるⅢ-Ⅴ/シリコン・ハイブリッドプラットフォームに関しては、レーザーの一体集積の商用化が始まるなど、近年急速に進展しているとする一方、2次元材料については商用化は遠いものの、優れた物性を有していることから多くの可能性があるとして、今後の研究の進展に期待すると述べました。
 竹中氏は、異種材料だけを用いることで、シリコンフォトニクスでは実現できないようなビヨンドシリコンフォトニクスとも言うべき光電子集積プラットフォームも可能になると述べ、異種材料は電子デバイスにおいても高性能化が実現できると研究開発が進んでいることから「電子デバイスと光デバイスは友達になれる。お互いの世界をウォッチすることが大事だ」と、講演を纏めました。

 今回のセミナーで克服すべき課題が示されたシリコンフォトニクス。研究開発は次のフェーズに移っており、その進展から目が離せません。

編集顧問:川尻多加志

 

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