編集長の今月のコメント(2010年11月)

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編集長 川尻多加志

今年の夏も各地で「ゲリラ豪雨」が猛威をふるいました。従来では考えられないような大量の雨が局地的に降るため、土石流などの災害や急激な河川の増水による洪水、地下施設への浸水などの被害を引き起こしています。また竜巻など、日本ではあまり考えられなかった現象も各地で起こっています。原因は、地球温暖化や都市部におけるエアコンなどの熱によるヒートアイランド現象と言われていますが、予測は難しくその確立が強く求められています。今月号では東海大学・理学部の山口滋教授に光応用環境計測の特集を企画していただきました。CBRNE(化学・生物・放射性物質・核・爆発物)兵器によるテロ対策も急務となっていますので、特集ではこれらを含め、光技術が如何に環境計測に貢献できるかを探りました。
今年のノーベル化学賞が、鈴木章・北海道大学名誉教授と根岸英一・パデュー大学特別教授、Richard Heck・デラウエア大学名誉教授に贈られました。受賞理由は、反応しにくい炭素原子同士を、パラジウムなどを触媒として利用して結合させるクロスカップリング技術の確立。クロスカップリング技術は液晶ディスプレイや高血圧症などの治療薬を始め、幅広い分野で利用されています。日本人ノーベル賞受賞者は米国籍の南部陽一朗氏を含め、これで合計18人となりました。根岸特別教授がパデュー大学での会見冒頭において、高度な研究になればなるほど基本が大事になるという理由で「私は日本の受験地獄の支持者です」と述べたのがとても興味深く、鈴木名誉教授も「日本のような資源のない、努力と知識しかない所では理科系が大事」と語るなど、お二人とも我が国における教育や研究状況の在り方、科学・技術の重要性を訴えていました(10月7日付けMSN産経ニュース並びに日刊工業新聞)。
尖閣諸島領海における中国漁船の拿捕と乗組員逮捕に対する報復として、中国が行なったレアアースの対日輸出規制は、乗組員釈放後も(この原稿を書いている時点で)解除されていないようです。中国は世界の工場として、また最近では市場として無視できない国ですが、天安門事件以降に強化された愛国教育が、国民に日本を敵視させることで中国共産党への不満を回避させようと狙っている点を考えると、我が国にとって中国という国が持つカントリーリスクは、欧米諸国など他の国々が持つそれよりも格段に高いということを覚悟しておくべきなのでしょうか。レアアースの国家備蓄の拡充、調達先の分散、リサイクルシステムの確立、代替品の研究開発促進が急務です。
円高が止まりません。我が国の輸出産業には大打撃です。日産だけでなく、他の自動車メーカーもついに国内販売をする車までを東南アジアで生産しようと動き出しています。産業の空洞化が心配です。一方、韓国企業はウォン安による価格競争力を活かし、液晶テレビや情報端末、半導体デバイス、自動車などの分野で世界シェアを伸ばしています。その韓国が断続的に為替操作を行なっているそうです(10月14日付けMSN産経ニュース)。中国が元高を抑えている事は周知の事実ですが、韓国の為替操作は公然の秘密とのこと。恥ずかしながら知りませんでした。「まさか」と思うのか「やはり」と思うのか、人それぞれなのでしょうが、清く、正しく、美しくは素晴らしいけれど、現実の世界は違う価値観で動いているという事でしょうね。

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