編集長の今月のコメント(2010年12月)

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編集長 川尻多加志

半導体チップの性能向上やコスト低減を実現するため、リソグラフィのさらなる高解像度化が求められています。現状の流れとしては、オプティカル・エクステンションを用いる方法とEUV光を使うリソグラフィ(EUVL)の二つの方向があり、それぞれで研究・開発が進んでいます。
EUVLは光源の短波長化で一挙に高解像力を実現するという革新的な技術ですが、その一方で多額の初期投資が必要であり、また量産適用が2013年以降になるとも言われています。それまでの期間はオプティカル・エクステンションで対応して行こうというわけです。
オプティカル・エクステンションは、波長193nmのArFエキシマレーザを光源に用いて、さらに液浸技術でNA1.35を実現したArF液浸リソグラフィの解像度の限界と言われているハーフピッチ40nmを打破するため、SRAF(Sub-Resolution Assist Feature)技術やSMO(Source Mask Co-Optimization)技術による寸法精度の向上、リソグラフィシミュレーション技術を核に寸法誤差を低減させるパターニング総合最適化技術、ダブルパターニング技術等を駆使してさらなる高解像度化を進めようというものです。
一方のEUVLは波長13.5nmのEUV光を用いる、いわば究極のリソグラフィで、内外で研究・開発が活発に進められて来ました。しかしながらEUV光源が未だ開発段階であるとともに、露光装置やマスクがすべて反射系で構成されていて露光環境も真空、さらにマスクパターン面に付着する異物に対するケアも必要といった、これまでのリソグラフィ技術とは大きく異なる特徴を持っています。これらの技術課題を克服するためにEUV光源やマスク、露光装置、レジスト材料等の研究・開発の進展に注目が集まっているのが現状です。
今月号の特集は、この次世代リソグラフィ技術に焦点をあててみました。企画していただきました技術研究組合・極端紫外線露光システム技術開発機構(EUVA)の岡崎信次部長、並びに各ご執筆者の皆様方、お忙しい中を有り難うございました。
この分野にはASMLという強力なライバルがいます。1990年代、日本メーカは世界シェアの7割以上を獲得していましたが、現在ではASMLが6割以上を持っているとも言われています。ASMLはEUVLにおいて積極的に研究・開発を進めていて、本特集でも述べられているように日本サイドはしばらく様子見という感じですが、何としても日本に勝ち抜いてほしいと思います。
スーパーコンピュータの性能ランキングでは、中国の国防科学技術大学が開発した「天河1号A」が米国のクレイ製を抜いて1位になりました。中国製は3位にも入っており、日本のNECと米国HPが東京工業大学に納品した「TSBAME2.0」は4位(11月16日付け日経産業新聞)。ここでも熾烈な競争が繰り広げられています。競争は格差を生むゆえに悪であるという思想が多くの共感を生むような国であるならば、これらの競争に打ち勝つのは容易ではないでしょう。
今月号に掲載した「レーザ製品の手引き」では光通信用レーザの最新動向、緑色レーザダイオード最新動向、加工用レーザ発振器の最近の話題の3本を解説していただきました。何れもここ1年のホットな話題にスポットライトをあてましたので、ぜひご覧になって下さい。

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