編集長の今月のコメント(2011年3月)

20110412-op1103.jpg

※文中の青い文字にはリンクが貼ってありますので、クリックしてご覧下さい。

編集長 川尻多加志

光ファイバ通信が持つ特長の一つに、伝送帯域が非常に広いという点が挙げられます。そのため、初期の光ファイバ通信においては、電波のように位相や周波数などを統合的に制御して周波数利用効率を上げる高度な変調技術を開発する必要はあまり高くなく、モールス信号のように光のオン・オフによって信号を送る強度変調直接検波(IMDD)方式が用いられてきました。
光ファイバ通信の歴史は、このオン・オフをどんどん速くすることで、より多くの信号を伝送して、メガビット伝送やギガビット伝送を実現してきました。その後、1本の光ファイバの中に複数の波長を入れて、それぞれで信号を送る波長多重技術が開発され、さらに大容量のテラビット伝送も達成しました。
しかしながら、光ファイバで伝送できる帯域は既にほぼ使い尽くされていると言われています。そこで、光ファイバ通信においても電波と同じように周波数利用効率を向上させるための高度な変調技術が必要となってきました。研究・開発の結果、2値、4値の位相変調や16値の直交振幅変調を用いて数十テラビットの伝送実験に成功して、さらに上を目指した研究・開発が内外で活発に進められています。
今月号の特集では、最新の光変調技術の動向を取り上げてみました。企画していただいたのは(独)情報通信研究機構・新世代ネットワーク研究センターの川西哲也研究マネージャーです。光ファイバ通信ではもちろん復調技術も重要で、オフライン信号処理を用いたデジタルコヒーレント復調技術とともにリアルタイムな高性能デジタル信号処理技術の開発が進められていますが、川西氏も指摘するように、光変調技術は信号の源を担う実システムにおける要素技術、光技術研究を先導する役割を担っていると言えます。特集では光変調技術の最新の研究開発事例とともに、電波天文への応用等についてもご紹介いただきました。ご執筆者の皆様、有り難うございました。
米国運輸省は2月8日、トヨタ車が急加速して事故が起きたとする問題に対し「電子制御系に欠陥はなかった」とする最終報告書を公表しました。報告書によると、NASAの技術者の協力で車を制御する28万行のソフトウェアプログラムや電気回路を分析、この他、電磁放射線を車にぶつける実験を行なっても急加速を引き起こす現象は確認できず、結局のところ原因は運転手によるアクセルとブレーキの踏み間違えやアクセルペダルとフロアマットの不具合と結論づけ、ラフード運輸長官は「これで(調査は)終わり」と述べたそうです。
大山鳴動して鼠一匹のこの騒動、米国の基幹産業の象徴であるGMやクライスラーが破綻した事実を受け、No.1となったトヨタを標的にした米国の民主党政府と議会による意図的作戦だったとも指摘されています。実際にトヨタはブランドイメージと米国での販売シェアを落とし、反対にGMを始めとしたビッグスリーは復活を果たしたのですから、当初の目的は達成されたと言えるでしょう。
ラフード長官は記者会見で、娘から電話で2011年型のトヨタ車購入を検討していると相談を受け、部下に確認した上で「買うべきだ」と忠告したとも明らかにしましたが、1年前の議会公聴会でトヨタを非難した言葉とのあまりの違いに「何と白々しい」と感じたのは私だけでしょうか。

カテゴリー: 編集長のコメント パーマリンク