百花繚乱 4Kテレビ

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会場風景

シーテックジャパン2013が幕張メッセで開かれました(10月1日~5日)。
今年の開催テーマは「スマートイノベーション -明日の暮らしと社会を創る技術力-」です。
自動運転を目指す次世代カーや太陽電池と蓄電池を組み合わせたスマートホームなどが話題を集めていますが、ここでは光技術を切り口として、また限られた時間と独断と偏見、プラス個人的興味でレポートさせていただきます。

先ず目についたのは4Kテレビのオンパレード。パナソニック、ソニー、シャープ、東芝、三菱電機といった各社が、この4Kテレビを全面に打ち出していました。

ちなみに、少し前までのディスプレイ関係の展示会では、3Dテレビが目白押しだったのですが、今回私が会場を回った範囲内では見受けられませんでした。
まさに隔世の感あり。先端技術を用いたコンシューマー向けの商品化の難しさを如実に表わしているような気がします。
また、何故か8Kもメーカーでは見受けられませんでした(NHKは展示)。

さて、今回特に注目したいのがパナソニックとソニーが出展した4K有機ELパネルです。これを含めて以下、各社の出展を紹介したいと思います。

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パナソニックの55型4K有機ELパネル

パナソニックが出展した55型の4K有機ELパネルは、RGBオール印刷方式を用いています。量産化を期待したいですね。液晶テレビでは65型4K対応テレビと20型という大きさの4K液晶タブレットを展示していました。設計用途などには使いやす
い大きさですね。

ソニーも56型4K対応有機ELテレビを出展していました。ただし技術については一切発表できない事になっているとの事でした。
同社では65型4K液晶TVも出展していました。

シャープは70V型の4K対応液晶テレビを出展しました。ちょっと面白かったのが2Kのフルハイビジョンパネルで4K相当の高精細表示が可能というアクオス・クアトロンプロ。超解像分割駆動エンジンを用いて実現したものです。4Kテレビは高価で、まだソフトもない。これに対し、これは低価格という特長を持っています。テレビ用途では過渡的な感じを受けますが、使えそうな用途が他に色々ありそうで、アプローチとしては面白いと思いました。
同社は自慢のIGZO技術で省電力という点も打ち出していましたが、このIGZOとMEMSを用いた7V型のディスプレイも展示、視認性と色再現性が高く低消費電力を実現できるとアピールしていました。

この他、東芝は85V型の4K液晶テレビ、三菱電機は同社の独自方式である赤色半導体レーザを用いて赤色の再現性を高めた65V型4K液晶テレビを出展していました。
有機ELでも、照明用ではパイオニアが三菱化学と共同開発した世界初の発光層塗布型有機EL照明モジュールを出展。同社は自動車用のヘッドマウントディスプレイも展示していました。

NTTドコモはソニーのインテリジェントグラスを展示。これには単眼用と両眼用があって、それぞれ用途が違うのですが、単眼用の「見るだけインフォ」ではパネルなどに書かれた英語や中国語を自動翻訳してくれる機能を持っている便利ものです。同社では、ソニーのスマホに取り付けられるレンズスタイルカメラやサムソンの腕時計型ギャラクシーギアーも展示しました。

表示関係から離れて興味深かったのが、TDKの熱アシスト磁気記録ヘッド。レーザーからの近接場光と磁性スピントロニクス技術を用いて、これまでの倍以上の記録密度1.5Tb/平方インチを実現、将来は5Tbまで可能だと述べていました。
ハードディスクドライブ形態では、2020年には40TBを実現するとの事でした。
データセンター用途に期待できそうです。

一方、センシング関係ではNECが顔認証システムや非接触型ハイブリッド認証システムを出展。指紋と静脈のダブルで認証するというもので、より高い精度の認証を実現するという事です。
この他にも、光を含めたセンサーなどが多く出展されていたようですが、今回は時間の都合で取り上げられなかった事をお断りしておきます。

4Kテレビは、放送もまだ先で現状ではソフトがない状況です。そこで各社とも画像処理チップによって、2Kを4Kにアップコンバージョンする機能を付けています。
新興国の4Kテレビには、ディスプレイは4K対応だが画像処理チップは搭載しておらず、4K放送が行なわれていない状況において4Kテレビと称して低価格(39型や40型で7万円程度)を売りにしているという話を聞きます。
よく言えば「したたか」なのですが、個人的には、その表現では少し思いやりがあり過ぎるのではと思います。

技術で勝ってビジネスで負けるというこれまでのパターンを繰り返さないよう、我が国のメーカー各社には戦略と戦術をよく練って勝負をしてほしいと切に思うシーテックでした。

編集顧問:川尻多加志

 

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