末松安晴先生、日本国際賞を受賞!

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 東京工業大学・栄誉教授の末松安晴先生が2014年(第30回の)日本国際賞(ジャパンプライズ)を受賞されました。
 発表は1月29日(水)の午後1時から東京のアーク森ビルイーストウィング37階「アークヒルズクラブ」で行われました。
 この賞は、事前に誰が受賞するのか教えてくれないのですが、今年は物理・化学・工学領域の中の「エレクトロニクス、情報、通信」と生命・農学・医学領域の中の「生命科学」の二分野で受賞という情報だけは入手していましたので、「もしや」と思って授賞式に出席したところ、この記念すべきこの朗報に接する事ができたという次第です。
 光エレクトロニクス技術に関わる全ての方々にとって、大変大きな喜びだと思います。おめでとうございます。

 「エレクトロニクス、情報、通信」分野で受賞された末松先生の受賞理由は「大容量長距離光ファイバー通信用半導体レーザーの先導的研究」。インターネットを始めとする情報ネットワークを支える大容量長距離光ファイバー通信に道を拓いた功績が認められたものです。
 読者諸兄は既にご存知だと思いますが、末松先生は1974年に位相シフトを有する周期的構造を用いた反射器を半導体レーザーに集積することを提案、高速変調時に発振波長が安定する動的単一モードレーザーの概念へと発展させました。
 並行して、光ファイバーの損失が最小となる1.5μm帯で発振するInGaAsPレーザーの室温連続発振も実現、1981年にはこれらの技術を組み合わせ、位相シフトを有する反射器を集積したInGaAsPレーザーを1.5μm帯で室温連続発振させ、動的単一モード動作を世界で初めて実証しました。
 月刊オプトロニクスでも、先生が東工大の学長だった頃、私がインタビューをさせていただき、その辺の事情をうかがった事が思い出されます。
 
 受賞理由の中に「要求される性能を予想し、理論と実験を組み合わせて新たなパラダイムを通信用半導体レーザーにもたらし、光通信波長で動的単一モード発振を実現した末松博士の業績は、工学研究のあるべき姿を示している」とありましたが、先生は挨拶の中で「戦後の我が国の技術開拓史の中で、研究開発段階から世界の最先端で進められたのは光通信が最初。革新的な技術が世の中に浸透するには、半世紀に及ぶ実に長い年月を要する。工学的な研究手法そのものをずばりと認識していただき、その高い見識に大変感謝しています」と述べていたのが、大変印象的でありました。

 なお、もうお一人「生命科学」分野での受賞者は、米国ロックフェラー大学のデビッド・アリス教授(米国)。DNA配列の変化を伴わない遺伝子の後天的変化を研究するエピジェネティクスの学問領域で、世界で初めて「遺伝子発現の制御機構としてのヒストン修飾を発見」した業績が評価されました。
 
 授賞式は4月23日(水)に東京で開催される予定で、各氏に賞状、賞牌と賞金5,000万円が贈られます。

 蛇足ですが、東京工業大学「栄誉教授」は最初「名誉教授」の間違いかと思ったのですが、本当に「栄誉教授」という称号があるそうです。東京工業大学ではノーベル賞、文化勲章、文化功労者、日本学士院賞またはそれらと同等の教育研究活動の功績をたたえる賞もしくは顕彰を受けた者に付与できるとの事です。

編集顧問:川尻多加志

 

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