デジタルサイネージも8Kへ

6月10日(水)から12日(金)までの3日間、東京ビッグサイトにおいて「デジタルサイネージジャパン:DSJ2015」が行なわれました。
会場では、デジタルサイネージ用のディスプレイはすでに4Kが当たり前という雰囲気。次のステージとしての8Kディスプレイも披露されていました。写真を中心にレポートします。

写真1 写真2
8Kサイネージシアターでは、NHKが中心となって開発された8K技術によるデモンストレーションが行なわれていました。画面はTOKYO GIRLS COLLECTION 2015 Spring/Summerの様子。
NTTグループのひかりサイネージ4K。4Kグラフィックボードを搭載したWindows PCをセットトップボックスにしてクラウド型デジタルサービスを展開しています。
写真3 写真4
ソニーの商業施設向け4Kディスプレイ。外付けタッチパネルでインタラクティブな表現が可能。
非常時には避難経路を瞬時に表示して迅速な避難誘導を行ないます。
MEDIAEDGEは、4Kディスプレイと4K/60p映像をH.265/HEVCでリアルタイムエンコード・デコードできるボードを紹介。従来のH.264規格に比べ、同じデータ量で2倍きれい、同じ画質でデータ量半分と謳っていました。
写真5
アストロデザインの4Kモニターには9.6インチ、12インチ、32インチ、60インチの四つのサイズのパネルがあります。
60インチパネルには、輝度ムラを補正するUniformity機能を搭載。

ところで、同時開催された「INTEROP」で偶然、懐かしい方とお会いできました。玉川大学・量子情報科学研究所・所長の広田修教授です。広田教授は1970年代の初めから量子通信理論の研究を続けてきた方ですが、まだ助教授だった1987年1月に「量子制御光通信の展望」というテーマで、セミナーの講演をしていただいたことがあります。最近でこそ量子情報通信はメディアでよく取り上げられていますが、この当時はまだ「何それ?」って感じだったことを覚えています。

写真6 写真7
玉川大学・量子情報科学研究所は量子エニグマ暗号(Y-00量子暗号)の通信応用研究を紹介。米国・ノースウエスタン大学と共同研究を行なっています。写真中央が所長の広田修教授、右が二見史生教授、左が加藤研太郎准教授。
アルティマは、メラノックステクノロジーズの100Gbpsインフィニバンド/イーサネットアダプタカードとEDR100Gbpsインフィニバンドスイッチを展示。
写真8
アンリツは100Gbps・4ポート同時試験が可能なオールインワン・トランスポートテスタを展示していました。

編集顧問:川尻多加志

 

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食の安全に貢献するX線検査装置

 6月9日(火)から12日(金)までの4日間、東京ビッグサイトにおいて「FOOMA JAPAN 2015国際食品工業展」が開催されました。主催は日本食品機械工業会、来場者数は主催者発表で92,802人。38回目を迎える、この展示会の今年のテーマは「発見!『食』はいつも進化系。」でした。
 食の安全・安心に関心が高まる中、展示会では、原材料を始めとして最新テクノロジーを駆使した食品機械、製品、サービスなど、食品に関連する多種多様な製品が展示されていました。今回は異物検査で期待が集まる検査機の中でも、特にX線検査装置を探してみました。

システムスクエア◆各種X線検査機や金属検出機を取り扱うシステムスクエアは、X線と光学系の画像を組み合わせたハイブリッドタイプの噛み込みX線検査機を出展しました。
 「噛み込み」とは包装シールの接着部分に、例えば煎餅やクッキーなどの割れた小さな欠片が挟まっている状態のこと。本機では、X線と光学系画像を組み合わせることによって異物がシールの接着部分にあるのか、袋の外側にあるものなのかを判別、X線を用いることで外からは見えないアルミ包装でも噛み込みを始めとした異常や異物を検知できるそうです。中身の割れ、袋の幅や長さ、面積、重量なども高感度で検査できるということです。

イシダ◆ウェイトチェッカーや金属検出機、X線検査装置を取り扱うイシダは、デュアルエナジーセンサー搭載の第2世代型X線異物検出装置を出展しました。
 デュアルエナジーセンサーは、コンベア上を流れる検査物にX線を照射して、性質の違う上下2段のラインセンサーから得られる画像を比較することで異物を検出するというもの。標準機では検出が困難だったアルミ板やSUS板といった微小金属、ゴムや肉に混入した骨、ガラス等を高感度で検出できるとのことです。

◆アンリツ産機システムも噛み込み検査のできるX線検査機を出展していました。その仕組みは、包装工程でシール部に噛み込んだ食品がX線を吸収して、結果としてX線ラインセンサーに届く線量が通常のシール部より少なくなる、その差を検知するというもの。同社ではデュアルエナジーセンサー搭載モデルも製品化しています。

◆大森機械工業は、光学式センサーに代えて包装機内に軟X線位置ズレセンサーを組み込むことでアルミ包材に対応でき、トップシールへの噛み込みを事前に防止できる位置ズレ検知装置を出展していました。

◆アンリツ産機システム製の小型X線装置を使用しているX線一体型パウチローダーを出展していたのが三橋製作所。縦搬送のためX線を阻害する搬送ベルトがなく、パウチを直接検査できるため精度が向上したとのことです。

 この展示会では珍しく写真撮影のガードが固かったのですが、そんな中、撮影を許可してくれた太っ腹のシステムスクエアとイシダに感謝いたします。

編集顧問:川尻多加志

 

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脱水銀の流れの中のUV-LED(下)

 5月27日(水)、東京・江東区の都立産業技術研究センター・イノベーションハブにおいて開かれた、日本照明委員会(JCIE)と照明学会 計測・標準分科会の主催の「第33回JCIEセミナー UV-LEDの技術開発・市場投入の現状とエネルギー計測上の課題」の後半レポートをお届けします。

 理化学研究所・平山秀樹氏の講演に続き、日亜化学工業の松下俊雄氏は「UV-LED製品の開発とその応用用途」の中で、自社製品を例にとって応用の現状を報告しました。同社は、ブラックライト応用において消費電力5Wで20W型蛍光灯ブラックライトと同じUV光量を実現、UV-LEDの搭載個数を増やして10Wで40W型蛍光灯ブラックライトと同じUV光量も実現したそうです。
 現在、UV-LEDはオフセット印刷の9割に用いられており、この他にも塗装応用、風力発電用の羽根の補修やトンネルの補修等、土木工事への応用、日焼けランプや捕虫ランプ、光触媒と組み合わせた殺菌用など、幅広い分野への応用が期待されています。
 変わったところでは「2015~16年の秋冬パリ・コレクション」の舞台照明に、同社の半導体露光機(i線ステッパー)用UV-LEDが用いられたそうで、衣装にUV光を当てると、目に見えない蛍光塗料の柄が浮かび上がる幻想的な雰囲気を醸し出したとの事です。

 休憩を挟んで「UV-LED全放射束標準の開発と供給」を報告したのが、産業技術総合研究所の木下健一氏。UV-LEDの開発と普及が進む中、製品に対する顧客からの信頼確保、社内での製品の品質管理のためにトレーサビリティの取れた測定が求められています。ところが、紫外域における光放射の絶対測定の難しさもあって、それが十分に行なわれていなかったのが実情。UV-LED測定のニーズの高まりの中、同研究所ではより簡単で信頼性のあるUV-LED全放射束標準を開発しました。
 全放射束を校正する方法には、球形光束計を用いる方法と配光測定を用いる方法の二つがあり、さらに球形光束計を用いる方法は、参照標準に分光全放射束標準を用いるものと分光放射照度標準を用いるものに分かれます。もう一方の配光測定を用いる方法は、分光放射照度標準を用いるものと分光応答度標準を用いるものに分かれます。
 各々の標準には整備状況や不確かさがあり、同研究所のUV-LEDの全放射束校正では、より不確かさの小さい測定を行なうため、分光応答度標準を参照標準として用いる受光器を利用した配光測定法が採用されました。講演では全放射束の校正に影響を与える様々な不確かさについても言及されました。

 東海大学の竹下秀氏は「UVエネルギー計測の課題」で、数多くのUV計測器が市販されている中、UVエネルギーの計測に関しては20世紀から抱える課題の大部分が未だ解決されていないと指摘。大部分のUV計測器の使用者が、その計測値が正確だと誤認していると警告しました。
 UV計測法には化学計測と生物計測、物理計測の三つがありますが、今回の講演は物理計測に絞って行なわれました。UV計測器は光の入射方向によって出力が変化し、製品の個体差が存在する事を認識する必要があり、実際の計測ではUV計測器の受光面よりはるかに大きいUV光源を非常に短い距離で計測する場合が多いので、極めて大きな計測誤差が生じるそうです。
 また、反射型回折格子とリニアダイオードアレイを組み合わせたファイバー入力形分光器は、検出に使っていない迷光を完全に遮断できないため、校正値そのものの取り扱いに注意する必要があるそうです。
 木下氏は、分野ごとのUV計測器の規格が必要と述べるとともに、選定にあたっては測定対象、光源、分光感度、測定波長、迷光レベル、測定強度域、入射方向特性等の様々なスペックが明記されている製品を選ぶべきと述べ、安価な製品に大きく書かれているCEマークはあくまで取り扱いに関する電気的安全に対するものであって、測定の特性を保証するものではないと注意を喚起していました。

 最後に、それぞれの講演者への質疑応答が活発に行なわれましたが、照明学会 計測・標準分科会幹事長でもある竹下氏は、閉会の挨拶の中で「ぜひ照明学会とJCIEに参加していただき、情報交換を行なう事で、社会がより一層豊かになるよう一緒に取り組んで行きたい」と述べ、半日に及ぶセミナーの幕を閉じました。
(終わり)

編集顧問:川尻多加志

 

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脱水銀の流れの中のUV-LED(上)

会場風景

 5月27日(水)、東京・江東区の都立産業技術研究センター・イノベーションハブにおいて、日本照明委員会(JCIE)と照明学会 計測・標準分科会の主催による「第33回JCIEセミナー UV-LEDの技術開発・市場投入の現状とエネルギー計測上の課題」が開催されました。
 2012年、環境負荷の低減を目的とした水銀に関する国際条約(水俣条約)が締結されました。これを受け、いま脱水銀と紫外線光源のLED化の流れが加速しています。一方、水俣条約では工業用ランプが規制の対象外になっていますが、一部の応用分野では、これまでに用いられてきた紫外線ランプからUV-LEDへの切り替えも進んでいます。

 このような状況の中、今回のセミナーではSSL(LEDや有機ELなどの半導体照明)光源の普及予測やUV-LED素子の研究開発状況、市場投入の現状や課題が取り上げられ、さらに従来から問題が多いとされていたUVエネルギー計測における課題や2015年に開発・供給がスタートしたUV-LED標準についての最新情報が紹介されました。少し長くなりますので、二回に分けてレポートします。

 このテーマが注目を集めているのを象徴するような満席の会場において、JCIE副会長であるパナソニックの斎藤孝氏が開会挨拶を行ない、引き続き東海大学の竹下秀氏は「工業分野におけるUV光源の重要性」の中で、太陽光のUVエネルギー絶対量計測を始め、これまでのUV計測への関わりを述べるとともに、現在の我々の生活空間の大部分がUVを活用して作られていると指摘。21世紀においては、省エネ化や有害物質の使用制限、安全・安心社会実現のため、UVをこれまでのように単純に使うのではなく、今後は管理して使っていかなければならないと述べました。

 「照明ビジョン2020」と題する講演を行なった日本照明工業会の内橋聖明氏は、昨年10月に同工業会が策定した「照明成長戦略2020」を紹介。内橋氏は、SSL器具の世界市場は拡大するが、一方の国内出荷比率は2020年に100%に近づくものの、市場数量規模の大きな拡大は望めないと指摘。単価下落も始まっており、出荷金額は横ばいから、やや減少に推移するとともに、交換ランプ全体の出荷数量も長寿命化LED光源の器具一体化等によって年々減少、このような市場動向から照明業界が成長するには、海外事業の拡大、高付加価値化、新光源等による用途拡大など、新たな市場開拓と拡大策が必須としています。
 また、性能表示と実力が乖離した粗悪な製品を市場から排除するためにも、公正で適切な競争ができる健全な市場の再構築が必要と述べ、標準化の推進、試験所の育成・整備と第三者認定の制度化、市場監視体制の確立を目指すと述べました。
 同工業会では、2020年までにCO2の排出量削減(2006年比30%削減)、水銀使用量削減(2006年比90%削減)を掲げ、特殊分野を除く一般照明器具分野で2020年までに国内SSL器具出荷率を100%(一般住宅用は2016年までに100%)に、国内SSL器具設置比率を50%にまで普及させる事を目標に掲げています。

 続く理化学研究所の平山秀樹氏は「UV-LEDの技術開発とその課題」と題して、UVC-LEDに関する研究開発の最新動向を報告しました。AlGaN系半導体はバンドギャップエネルギーがUVAからUVCまで広くカバーしている事に加え、有害材料も含まないため、UV発光素子を実現する材料として最適と言われています。また、青色LEDの外部量子効率(EQE)が10%を超えた2000年頃から市場が飛躍的に拡大した事を考えると、現時点で研究トップデータが10%程度を超えたUVC-LEDも、今後5年から10年で殺菌用途を中心に大きく市場が展開すると予測されています。
 平山氏は、AlGaN発光層から高効率な発光を得るために、アンモニアパルス供給多段成長法を考案、これによりAlN下地層の貫通転移密度を従来比1/100程度に低減させ、内部量子効率(IQE)を60%以上増強する事に成功しました。さらにAlGaNにInを混入する事で、IQEを推定80%に高める事にも成功。加えて、多重量子障壁(MQB)の導入で電子注入効率(EIE)も80%以上に改善、220~240nmの短波長LEDの高出力化に成功しました。
 光取り出し効率(LEE)向上については、p-AlGaN透明コンタクト層とAl系高反射p型電極による反射取り出し効果を用いるとともに、AlN裏面へのフォトニック光取り出し構造形成とサファイア基板の剥離方法を併用する事で70%以上が可能と指摘。研究では1.7倍のLEE向上を観測して、EQEも10%に迫る値が得られたそうです。これらの手法を用いて、250~280nmで30mW以上の室温CW出力を達成しており、237nmでも5mWのCW出力が得られたとの事です。(続く)

編集顧問:川尻多加志

 

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進化する自動車と光技術

 自動車技術会主催による「人とくるまのテクノロジー展2015」が5月20日から22日までの3日間、パシフィコ横浜にて開催されました。
 主催者発表によれば、出展社は過去最高の538社(1,150小間)、来場者は3日間で86,939人に上ったとの事です。ランプやヘッドアップディスプレイ(HUD)等、会場を回って目についた光技術関連の展示をいくつか紹介します。

小糸製作所◆小糸製作所:LEDランプの次を狙って、半導体レーザーとPOFに有機EL(OLED)を組み合わせた新しいコンセプトのリアコンビネーションランプ「Ray Motion Ⅱ」を展示しました。半導体レーザーから出た光をPOFに通すことで自由な線状のデザインが可能になり、有機ELを多数並べてそれぞれを菱形面状に発光、この組み合わせによってLEDでは成し得ない多様な表現が可能になりました。5年後の実車搭載を想定して開発を進めているそうです。同社ではレーザーとLEDを組み合わせて、発光部面積を小さくしたヘッドランプも開発しています。

市光工業◆市光工業:内外の自動車に搭載されている各種LEDビームユニットを展示しました。写真左側の上段がLEDアダプティブドライビングビームユニット(左側がパターン可変式、右側がシェード可変式)、中段がLEDハイビーム&ロービームバイファンクションユニット(左側がツインレンズタイプ、右側がシングルレンズタイプ)。下段がLEDロービームユニット(左側がプロジェクター+レンズタイプ、真ん中が標準プロジェクタータイプ、右側がリフレクタータイプ)。写真右側の上・下段は、LED光源、LED駆動回路、放熱部品、光源ソケットが一体となった低価格・小型のソケット型標準LED光源ユニットです。

三菱電機◆三菱電機:液晶方式(写真左)とレーザースキャン方式(右)のHUDを比較展示しました。外観はどちらも同じで、2.1m前方に17インチ相当の画像を投影します。液晶方式の解像度800×200、色再現性41%、コントラスト1000:1に対し、レーザースキャン方式の解像度は、レーザースポットの位置ずれと収差を低減して1280×320を実現。色再現性についてもRGB三色のレーザーを用いているので、145%という色域を持っています。またコントラストは7000:1で、表示領域の白浮きを低減して夜間における優れた視認性を実現。消費電力についても、表示部だけレーザーを点灯させるため、液晶方式の1/10に抑える事ができたとの事です。

矢崎総業◆矢崎総業:ナビゲーション情報や安全運転に関する情報等、車両内外の情報量増加に対応するために、HUDの大画面化とカラー化を実現。従来品は表示寸法が62.8×31.4mm、表示デバイスがVFDドット、表示色がブルーやグリーンの単色であったのに対し、開発品では表示寸法240×90mmと面積比1100%増の大型化に成功、表示デバイスはTET-LCDを採用して、表示色はRGBになりました。光学系を高倍率化する事で非球面ミラーと表示デバイス間の距離を短くして、最少パッケージで大画面を実現したそうです。また、同社は車載用の光通信コネクタも展示、ギガビットイーサネットに適用可能で、SI型POFとLEDを採用、40mの距離で1Gbpsの高速伝送ができ、使用温度範囲は-40℃~105℃との事です。

日本精機◆日本精機:ドライバーに提供される情報の多種多様化に対応するため、各種ステータス情報(車速や標識情報等)と動的な運転支援情報(ルートガイドや前方・死角障害物警告等)とを遠近二画面で空間的に切り分けたHUDを展示しました。遠方表示は世界初の傾斜面で行なって、表示距離が連続的に変化するとの事。実際の背景とHUD表示の親和性を高め、ドライバーの視覚への自然でスムーズな情報提供が行なえます。遠方は3~5mの傾斜面(5m前方で29インチ相当の画面)になっていて、近傍は2.5m前方に8インチ相当の画面が表示されます。遠近二画面は一つの表示デバイスで実現したそうです。

ヴァレオジャパン◆ヴァレオジャパン:レーザースキャナー「SCALA」は、開口角の大きなレーザーで車両前方を広範囲にわたってスキャン、車やバイク、歩行者、さらには静止物である木や停止している車、ガードレールも検知します。また、検知されたデータをもとにして、検知障害物ごとに種類分けされたデータとともに、車両周辺マップが作成されるそうです。昼夜を問わず同等性能を発揮するとともに、高速道路における高速走行時も、駐車場などにおける低速走行時にも対応するとの事。カメラと組み合わせた自動運転システムの公道実車デモも実施したそうです。

ボッシュ◆ボッシュ:SVCステレオビデオカメラ等、各種カメラを展示しました。同カメラは高速・モデルフリー三次元計測および視差計測を採用しており、障害物、歩行者、フリースペースの有無を計測します。パターン化されていない物体の認識が可能で、解像度は1280×960ピクセル(1.2メガピクセル)、水平方向50°、垂直方向28°の視野角を有しているとの事。
  
  

 この他にも、日立オートモティブシステムズがステレオカメラやビジョンシステムを、クラリオンが360°オールサラウンドオーバーヘッドビューカメラシステム、デンソーが画像センサとミリ波レーダセンサを組み合わせたアクティブセイフティーシステム、カルソニックカンセイがHUDとマルチディスプレイ、フルカラーTFTメーター等を一体化したCPM/HMI(コックピットモジュール/ヒューマンマシンインターフェース)等を展示していました。

 なお、月刊オプトロニクスの8月号で「進化する自動車を支える注目の光技術(仮題)」と題する特集を企画しました。最新の研究開発事例を紹介していただく予定ですので、こちらも乞うご期待を。

編集顧問:川尻多加志

 

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トータルコストで勝負

 5月13日から15日までの3日間、東京ビッグサイトで「データストレージEXPO」が開催されました。
 データストレージ用メディアというと、どうしてもハードディスク、磁気テープ、半導体メモリがメインという感じですが、光業界の人間としてはやはり光ディスクが気になるところ。会場を歩いてみました。

日立LGデータストレージ 日立LGデータストレージの光ライブラリ「HL200」は、業務用途専用BD-Rの両面タイプ(200GB)を500枚搭載することで最大100TBの容量(ユーザ容量:最大84TB)を実現。システムとしては、これを10台まで搭載でき、総容量1PB(ユーザ容量:840TB)まで拡張できます。
 同社の加速試験では、30℃の環境でも50年以上のデータ保存が可能であり、35℃環境でも30年以上のデータ保存が可能とのこと。記録済みディスクを7日間、塩水と水道水に浸けた後、水分をふき取って再生した結果、問題なく再生できたそうです。
 
ユニテックス 自動データ書き込みができるユニテックスのBDパブリッシングシステム「ODA2002HQ」も50年以上の長期保存ができるBD-Rを用いていて、ドライブを2台搭載、200枚のBD-R、DVD-R、CD-Rの連続書き込みが可能です。BD-Rドライブはパイオニア製で、ディスクは三菱化学メディア製を使用しています。同社では、LTO-5テープドライブと組み合わせたハイブリッドデータアーカイブシステム「BAS2520」(写真)も製品化しており、こちらは長期保存用BD-Rと大容量(1.5TB)のLTO-5テープを用途によって使い分けできるとのことです。

創朋 創朋が扱うアルメディオ製「JIS Z6017 アーカイブパッケージ」は、JIS Z6017に準拠したデータ保存用。こちらもドライブはパイオニア製、ディスクは三菱化学メディア製。
長期保存用BD-Rを用いたタイプには100GBと50GBの2種類があり、同社ではこれを「200年アーカイブ」と称していて、一般業務用BD-Rを用いた「企業用アーカイブパッケージ」を100年アーカイブと称しています。
 
 

 ここで気をつけていただきたいのは、各社の寿命表記です。
 例えば、同じメーカーのドライブとディスクを使っているユニテックスと創朋では、寿命にずいぶん差があるという印象を受けます。しかし、これはディスクメーカーがスペックを発表した時期や、また測定法の違い(新旧の差を含む)から生じているのだと思われます。この点を統一すれば、寿命は同じと考えて良いと思います。詳しい点については、各社に問い合わせをしてみてください。

 データセンターに占める消費電力の約40%はストレージと言われています。ハードディスクドライブ(HDD)システムでは、閲覧時以外でも常にディスクを回転させているため、それだけ電力を消費してしまいますし、マイグレーション(データの移し変え)も必要なのでHDDの購入コストやその作業コストも必要になります。

 その点、光ディスクを用いたシステムは常時通電が不要なため電力コストを削減でき、長期保存が可能なのでマイグレーション作業のコスト等も削減できます。光ディスクアーカイブシステムは、トータルコストをアピールして勝負に出ています。

【各社連絡先】
日立LGデータストレージ:sales@hldsgw.com
ユニテックス:042-710-4630
創朋:03-5812-2151(infosoho@soho-jp.com)

編集顧問:川尻多加志

 

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電子光技術シンポジウム開催(下)

 第4回電子光技術シンポジウム「超短パルスレーザーの応用とポータブルセンサの未来」の後半レポートをお届けします。

 昼食後の午後のセッションは、バイオを中心としたセンシングの最新研究動向報告3本。先ず、産総研・電子光技術研究部門における最新の研究開発成果として、古川祐光氏が「高感度生体分光装置と非侵襲血液計測への応用」の中で、高感度分光技術を用い指先を透過した光の分光情報を分析する非侵襲血液脂質測定技術を紹介。フーリエ分光装置に組み込むシェアリング干渉計に偏光干渉を利用して、偏光状態の異なる二つの干渉信号(インターフェログラム)を得ることでノイズを低減させたとのこと。小型・軽量化を進めて家庭や職場で手軽に利用できることを目指しているそうです。

 続く芦葉裕樹氏は「V溝バイオセンサ」で、V字断面溝チップの開発によってSPRF(表面プラズモン共鳴励起増強蛍光免疫測定)の小型・簡便化を実現したV溝バイオセンサを紹介しました。手で運べるくらいの小型化やV溝センサのチップをポリスチレンから高屈折率ガラスに改良して、一層の電場増強度の向上と高感度化を目指しているとのことです。

 藤巻真氏は「導波モードセンサ:レビュー」で、導波モードセンサの反射膜材料を従来のAuやAgから、ガラスとの密着性が良く物理的・化学的に安定で感度も良好、加工性も高く扱いやすいSiに変更して、具体的には、SiO2基板の上に単結晶Si層を作り、さらにその上にSiO2層を乗せたモノリシック検出板を開発したとのこと。手のひらサイズの小型化やチャンネル数も最大19チャンネルのものも開発中で、センサーチップに穴を形成したラベルフリー検出、ウィルスや金属、重金属の検出、めっき液の劣化測定、血液の凝集観察、エンドトキシンの検出など、幅広い応用例を紹介しました。

 その後に続く招待講演は、慶應義塾大学・理工学部・教授の鈴木孝治氏の「センシング材料と化学センサ開発」、東京医科歯科大学・生体材料工学研究所・教授の宮原裕二氏の「固液界面の機能化とバイオトランジスタ」、産総研・環境管理技術研究部門の鳥村政基氏の「アジア水プロジェクトにおける水質センサ開発」の3本。

 鈴木氏は、生体などのin vivo計測用分子センサと微小な選択的測定プローブ、さらにマイクロチップのような集積化したマルチセンサを分子レベルから構築するための機能性センシング分子の設計と合成およびデバイス化・システム化に取り組んでいて、その医療、環境、食への計測応用を紹介。複数の電気化学センサとニューラルネットワーク情報解析技術を用いた味覚センサを実用化して、大学発ベンチャーも起業したそうです。

 宮原氏は、DNAシーケンシング技術を始め、半導体を用いた各種のバイオセンサについて紹介した上で、高感度化や高密度アレイ化、集積化といった特長を活かし切るようなアプリケーションを開発することの重要性を指摘していました。

 鳥基氏は、産総研の六部門で進めている水プロジェクトと各種センサを紹介。アジア、特に中国における水不足は深刻で、使用した水を再利用しないと間に合わないというのが実情。そこで、水を監視しながらその情報を水処理の現場にフィードバックするスマートウォーターが注目を集めています。講演では、危険か危険でないかが直ぐに分かる、光合成生物素子やヒト細胞を用いたセンサ等が紹介されましたが、光ディスクを用いたセンサは、培養が不要で、光学顕微鏡で22時間もかかっていた検出が僅か0.2時間で検出できるそうです。水ビジネスにおいては、GEなどが膜分離活性汚泥検査用の各種センサメーカーの買収を重ねシェアを拡大させている中、アジアにおける日本企業のシェアは低く、技術を持っているのにビジネスができていないと警鐘を鳴らしていました。

 最後は、招待講演者の方々と産総研の研究者によるセンシングの将来に関するパネルディスカッションが行なわれました。テーマは「センサ開発の将来展望」。パネラーは鈴木孝治氏(慶應義塾大学)、宮原裕二氏(東京医科歯科大学)、鳥村政基氏(産総研・環境管理技術研究部門)、藤巻真氏(産総研・電子光技術研究部門)の四人とモデレーターは粟津浩一氏(産総研・電子光技術研究部門)。
 
 ここでは「ビジネスとして、より成長させるには?」や「信頼性を向上させるには?」といった点について議論が展開されましたが、ビジネス面ではやはりコストダウンによるセンサおよび検査機器の低価格化が重要のようです。一方で、高性能化や小型化との矛盾をどのようにクリアするか、薬事法に対する根気力も必要との指摘もありました。信頼性については、検査精度の向上はもちろんですが、コストの安い簡易検査と精密検査の上手な使い分けが重要といった意見が出されていました。

 さらに、閉会の挨拶に立った電子光技術研究部門長の原市聡氏は、ICTと融合したユーザー側に立った新しいものづくりが必要で、インフラやテロといったリスク解決のため、国立研究開発法人となる産総研は大学、企業、公的研究機関と連携していきたいと述べていました。
 この日は冷たい雨がそぼ降る一日でしたが、シンポジウムの後に会場を移して開かれた情報交換会では、和やかな雰囲気の中、会場のあちこちで熱い議論が繰り広げられていました。(終わり)

編集顧問:川尻多加志

 

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電子光技術シンポジウム開催(上)

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 産業技術総合研究所(産総研)電子光技術研究部門の主催、光産業技術振興協会(光協会)の共催のもと、第4回電子光技術シンポジウムが東京・秋葉原のUDXカンファレンスで2月18日に開催されました。
 このシンポジウム、最先端の研究開発と新産業創出の展望に関する情報を提供するとともに、電子光技術研究部門を中心にした産総研の研究成果を紹介するため、これまでも毎年開催されてきたもので、今回のテーマは「超短パルスレーザーの応用とポータブルセンサの未来」。今回のブログは少々文章が長くなってしまいましたので、(上)と(下)の2回に分けてレポートします。

 開会の挨拶を行なったのは、産総研・情報通信・エレクトロニクス研究分野研究統括の金丸正剛氏と光協会・専務理事の小谷泰久氏。金丸氏は、この4月から国立研究開発法人になる産総研の方向性として、産業界との双方向の橋渡し機能を強化するとともに、大学や研究機関との連携を強めることで研究を産業にまで発展させていきたいと述べました。一方、小谷氏は輸出産業である光産業は円安によって確実に良くなっており、特に自動車産業にリンクしているレーザー加工分野が良いと指摘。アベノミクスの成長戦略も光技術に関連しているものが多く、光産業はチャンスを迎えていると述べていました。

 続く産総研・電子光技術研究部門長の粟津浩一氏による「電子光技術研究部門の概要とシンポジウムの趣旨」説明の後は、3本の招待講演が続きます。

 トップバッターのパラダイムレーザーリサーチ・代表取締役社長、鷲尾邦彦氏は「世界のレーザー応用技術動向」の中で、加工用レーザーの市場動向を紹介するとともに、欧州各国のレーザー加工関連の国家プロジェクトを紹介。特にレーザー加工に国を上げて注力するドイツの切れ目ない国家プロジェクトと学会発表における存在感の大きさに警鐘を鳴らしていました。新しい光源として、高出力VCSELが台頭しているそうです。
 
 続いての理化学研究所・基幹研究所・先端光科学領域長の緑川克美氏は「理研における光量子工学戦略」を紹介。「超高速で動く物質中の電子や原子の動きを見る」、「生体を生きたまま見る」、「構造物や容器の中を壊さず見る」、「地球内部の変動を見る」という四つの「見えないものを見る」をテーマに掲げ、フェムト秒レーザーの限界を突破するアト秒レーザーによる電子ダイナミクス計測とその応用事例、寿命60年を迎える我が国の橋やトンネル等、社会インフラへの応用として、レーザーや中性子、テラヘルツ光を用いたコンクリート内部の計測や金属の錆びのメカニズム解明といった研究事例を紹介していました。

 産総研・環境化学技術研究部門の新納弘之氏は「CFRP材料のレーザー加工~技術研究組合ALPROTの成果~」で、平成22年度から26年度までALPROT(技術研究組合・次世代レーザー加工技術研究所)で実施されたNEDOの「次世代素材等レーザー加工技術開発プロジェクト」の概要と成果を報告。一般にCFRP材料は、連続繊維型の熱硬化性樹脂(CFRP)と短繊維型の熱可塑性樹脂(CFRTP)に分けることができますが、同プロジェクトではその双方を対象としており、3kWクラスの近赤外(1090nm)CWファイバレーザーのマルチパス照射によって、切断板厚3mmで6~10m/分の加工速度を実現、加工時の周辺樹脂部の熱損傷や蒸発も0.1mm以内に押さえることができたとのことです。

 午前のセッション後半の2本は、産総研・電子光技術研究部門の最新の研究開発成果報告。欠端雅之氏による「フェムト秒レーザー照射による物質プロセスと応用」では、200フェムト秒μJ級のファイバーレーザーシステムを開発して、CIGS太陽電池のスクライブ加工とジルコニア系セラミックス表面への周期構造を形成する応用事例が、吉富大氏による「多波長合成による超短パルス光技術の展開」では、超高速過程を計測・操作したり、非熱的高機能なレーザー加工・改質プロセスを実現するため、光で電子を自在に操る、ファイバーレーザーを用いた光ファンクションジェネレータ実現のための研究が紹介されました。長時間安定性と高精度同期の両方を兼ね備えているとのことです。(続く)

編集顧問:川尻多加志

 

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システムナノ技術に関する時限研究専門委員会のキックオフ研究会、開かれる。

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 電子情報通信学会・システムナノ技術に関する時限研究専門委員会(略称SNT)主催の第1回研究会「システムナノ技術によるイノベーションへの展開に向けて」が2月5日(木)、東京は本郷の東京大学・武田先端知ビル・武田ホールで開かれました。

 SNTは昨年の10月、ナノテクノロジーと光デバイスを中心にして、出口を見据えたナノテクノロジーのシステム化を目指して立ち上げられた新しい研究会(委員長:大阪大学・フォトニクス先端融合研究センター、同大学・大学院工学研究科の高原淳一教授)。その前身は、次世代ナノ技術に関する時限研究専門委員会(略称NNN)で、これまでフォトニクスをベースとしながら異分野との連携を視野に入れ、ナノの融合化に関する研究討論や産学官連携の場を提供してきました。

 このNNN、10年という節目を昨年迎えるにあたって、グリーンイノベーションやライフイノベーションといった国家戦略を踏まえ、その存在意義を問い直したとのこと。その結果、出口に近い電子情報通信学会におけるナノテクノロジーの重要性はますます大きくなりつつあり、次の10年に向け発展的に活動を継続することが必要であると、ナノのシステム化によるイノベーションを目指し、名称を変更して引き続き活動を継続することを決定しました。

 今回のキックオフ研究会のテーマは「システム技術を活用しイノベーション創出に大きな期待がもたれる技術分野の今後の展開」。SNTへの新たな展開に当たって、その活動の方向を探るため、ナノ技術とシステムの融合による「システムナノ」技術を今後のイノベーションのキー技術と捉えています。
 講演は、高原淳一委員長の委員会設立趣旨説明からスタートして、JST研究開発戦略センター上席フェローの曽根純一氏が基調講演でナノテクノロジーのシステム化を見据えた国家戦略を紹介、さらに次世代エレクトロニクスを牽引すると期待されているシステムナノ技術に関連して、次世代スーパーコンピュータ、光電子融合集積技術、3次元集積回路から単電子トランジスタ、センサシステム、ナノプロセス技術まで、トップレベルの研究者による最先端の研究・技術開発事例が紹介されました。具体的な講演題目と講演者は以下の通りです。

「開会・委員会設立趣旨」 高原淳一氏(阪大)
基調講演
 「システムナノへの期待と戦略」 曽根純一氏(JST)
招待講演
 「今後のスパコンの視点から見たシステムナノへの期待」 松岡聡氏(東工大)
 「More comfort技術と技術マネジメント」 若林整氏(東工大)
 「小数個のドーパントを利用したSiナノデバイス」 田部道晴氏(静岡大)
 「光電子融合システムに向けた光集積回路」 中村隆宏氏(PETRA)
 「VCSELフォトニクスとシステム展開」 小山二三夫氏(東工大)
 「機能集積イメージセンサの開発動向と今後の展開」 川人祥二氏(静岡大)
 「三次元集積回路の今後の展開」 遠藤哲郎氏(東北大)

 SNTの研究討論対象は、ナノ技術とフォトニクスをベースとしながら、従来の概念に捕われずナノ技術を種々の分野へ積極的に融合、システム化する領域。新しいナノ構造の作製技術、理論/特性解析、素子/デバイスの設計、作製および評価技術をベースとして、以下の領域において、これらのナノ技術のシステム化までを研究領域としてカバーするとしています。

 ◆ナノ材料、ナノプロセス、ナノ製造技術
  (新しいナノ加工技術、新しいナノ構造作製技術、ナノインプリント技術、ナノプリント技術、
   ナノ・マイクロ3次元造形技術)
 ◆ナノフォトニクス
  (ナノフォトニックデバイス・システム、プラズモニクス、メタマテリアルデバイス・システム)
 ◆ナノメカトロニクス
  (オプトメカトロニックデバイス・システム、MEMS、NEMS、マイクロTASデバイス・システム)
 ◆ナノバイオニクス
  (バイオチップ・システム、ゲノム、生体分子機能解析デバイス・システム)

 今後の活動としては、異分野融合による新たな機能発現の探索、新規デバイスの概念創出に止まらず、それらのシステム化によって21世紀の核となるイノベーションの芽を育むことを目的に、研究情報の提供や意見交換、討論を行なう計画。具体的には研究会を年に2回程度開催するほか、関連する国内外の会議の開催にも貢献して、この分野の学問および技術の発展・普及を図りたいとしています。

編集顧問:川尻多加志

 

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決定!第30回櫻井健二郎氏記念賞

右から光産業技術振興協会専務理事・小谷泰久氏、受賞者の河田聡氏と櫛屋勝巳氏、記念賞委員長の東京大学教授・荒川泰彦氏

右から光産業技術振興協会専務理事・小谷泰久氏、受賞者の河田聡氏と櫛屋勝巳氏、記念賞委員長の東京大学教授・荒川泰彦氏

第30回(平成26年度)の櫻井健二郎氏記念賞が決まりました。

受賞者は大阪大学、理化学研究所、ナノフォトン(株)の河田聡氏と昭和シェル石油(株)、ソーラーフロンティア(株)の櫛屋勝巳氏のお二人。
河田氏の受賞は「プラズモン効果による超解像度顕微鏡に関する先導的研究」に対して、櫛屋氏の受賞は「CIS薄膜技術による第2世代薄膜太陽電池の実用化」に対して贈られたものです。

櫻井健二郎氏記念賞は、光産業技術振興協会・理事であった故・櫻井健二郎氏の光産業の振興に果たした功績を讃えるとともに、光産業および技術の振興と啓発を図ることを目的として創設されたもの。これまでにで21名の個人、34グループの合計55件、延べ132名が受賞しています。今年度は14件の応募の中から選ばれました。

河田氏は大阪大学・大学院工学研究科の教授であり、理化学研究所のチームリーダー、ナノフォトンの会長でもありますが、今回の受賞理由は以下の通りです。報道資料より引用させていただきます。

「受賞者は、金属ナノ構造とフォトンとの相互作用に関わる多くの新しい概念を提唱・実証し、プラズモニクスの領域拡大と技術開発の展開を先導した。特にナノサイズの先端径を有する金属探針を用いることにより、プラズモン効果に基づくラマン散乱光の超解像度顕微システムを世界に先駆けて開発した。計測対象も、分子からナノ半導体材料、ナノバイオ材料など広く展開させており、異分野や産業へ貢献するところが大きい。これらの優れた研究業績に加え、自ら設立したベンチャー企業で最先端の研究者向けにラマン顕微鏡を10年以上にわたり製造販売しており、光産業技術分野においても革新をもたらしている。」

一方の櫛屋氏は昭和シェル石油、エネルギーソリューション事業本部の担当副部長で、ソーラーフロンティアの執行役員でもあります。
受賞理由は以下の通りです。

「受賞者は、薄膜太陽電池第1世代が実現できなかった変換効率を、CIS(CuInSe2:カルコパイライト系)薄膜太陽電池において環境負荷低減に有効なCdフリー・鉛フリーの形で実現するとともに、事業化も達成した。単結晶Si太陽電池技術の性能にも匹敵し得るCIS薄膜太陽電池は、世界最大規模の1ギガワットラインにてフル操業で生産されており、ソーラー住宅から太陽光発電所まで、「メイド・イン・ジャパン」の薄膜太陽電池事業として進展している。受賞者らが主導したCIS薄膜太陽電池技術の開発は、エネルギー安全保障、地球環境問題解決のみならず、光電変換技術を主体とする光産業の今後の発展に貢献するところが大きいと認める。」

シンポジウム会場

シンポジウム会場

授賞式は2月4日、東京・新宿のリーガロイヤルホテル東京で開かれた平成26年度光産業技術シンポジウムの会場で行なわれ、お二人には賞状、メダル、副賞の賞金が贈られました。

なお、今年の光産業技術シンポジウムのテーマは「新たなパラダイムシフト社会を築く光情報通信」。

光産業技術振興協会と光電子融合基盤技術研究所の共催で行なわれたもので、プログラムは以下の通りでした。

■ 開会挨拶:光産業技術振興協会 専務理事 小谷泰久氏 
■ 来賓挨拶:経済産業省商務情報政策局情報通信機器課 課長 三浦章豪氏 
■ 基調講演「変革する情報社会を支えるフォトニックネットワーク」
  慶應義塾大学理工学部情報工学科 教授 山中直明氏 
■ 招待講演「より柔軟な光ネットワークの実現とSDN(Software Defined Networking)」
  日本電気コンバージドネットワーク事業部 主席技術主幹 中村真也氏 
■ 招待講演「石狩データセンターの事例に見る高品質と省エネを両立するデータセンター」
  さくらインターネット 代表取締役社長 田中邦裕氏 
■ 招待講演「光テクノロジーロードマップ-光情報通信技術-」
  日本電信電話NTT未来ねっと研究所フォトニックトランスポートネットワーク研究部
  主幹研究員グループリーダ 平野章氏 
■ 招待講演「8K/4K映像機器用光伝送インターフェースの開発」
  NHK放送技術研究所テレビ方式研究部 添野拓司氏 
■ 講演 「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発
     -光I/Oコアとデジタルコヒーレントレシーバ-」
  光電子融合基盤技術研究所 小倉一郎氏、尾中寛氏

シンポジウム冒頭、開会挨拶に立った光産業技術振興協会の小谷氏は

「光産業を取り巻く状況は改善されつつある。新エネルギー、省エネルギー、東京オリンピックの開催、円安による製造拠点の国内回帰、さらには青色LEDを実現した日本人研究者のノーベル賞受賞など、光産業にとっての明るい将来が見えてきた。
安倍政権による成長戦略が確実に実施される中、健康・医療技術、ロボット技術、自動運転技術、IT技術、エネルギー技術などにおいて使用されるカメラ、光センサ、ディスプレイ、光ネットワーク、太陽電池、LED照明等々、成長戦略を実施に移すためのキーテクノロジーを多く含む光技術は成長戦略の柱である」

と述べていました。

 データセンタやスーパーコンピュータ、情報通信ネットワークにおける省エネルギーは解決しなければならない喫緊の問題。その解決のため、いまシリコンフォトニクスによる集積化技術やレイヤーの垣根を超えた柔軟なネットワークの実現など、光情報通信技術に求められる役割がますます大きくなっています。

編集顧問:川尻多加志

 

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