新たなる旅立ち 一般社団法人日本光学会が活動をスタート

 1月16日の金曜日、東京都板橋区の「ハイライフプラザいたばし」において、一般社団法人日本光学会の設立記念シンポジウムが開催されました。

 日本光学会は、これまで公益社団法人応用物理学会に属する分科会の一つでしたが、昨年9月に一般社団法人として登記を行ない独立、この1月から本格的に学会活動をスタートさせました。今回のシンポジウムは、これを記念して開催されたものです。

 日本光学会の前身である光学懇話会は、応用物理学会の分科会として1952年に設立されて以来、定期刊行の会誌や英文論文誌の発行、年次学術講演会やシンポジウムの開催、14に及ぶ研究グループ活動などを含め、活発な活動を展開してきました。

 ところが2011年、公益法人制度改革法に伴って、親学会である応用物理学会が公益社団法人となり、日本光学会によれば、その活動も大きく制約を受けることになります。具体的には国際会議や国内会議の共催、他学会とのMOU(Memory Of Understanding)締結も独自の責任で行なえず、対外的に対等な立場を維持することも難しくなり、国際的なアピアランスが悪くなっていったとのことです。

 そこで2012年の11月、同学会内に将来問題検討委員会が設立され、2013年1月の新旧合同幹事会において一般社団法人日本光学会の設立を答申、2014年3月の幹事会で、その設立と現分科会活動の新法人への移行が三分の二以上の賛成で承認されました。これを受けて昨年6月には会員による投票が行なわれ、投票資格者1,432名のうち投票総数853票を得て、うち774票(93%)の賛成で新法人の設立が決まりました。

「大事なのは人」と語る黒田和男会長

「大事なのは人」と語る黒田和男会長

 初代会長の黒田和男氏(宇都宮大学)はシンポジウムの挨拶の中で「10年前に約1,800名だった会員が昨年は約1,400名と、会員数も減少傾向にあったが、この閉塞感を打破するためにも独立の道を選んだ」と述べるとともに「新生日本光学会は、これまでの事業を殆どそっくり引継ぐ。国際光年の事業にも全面協力する。財政的に不安もあるが、学会は人と人の繋がりで出来ている。大事なのは人」と述べていました。
 
 日本光学会の会員数は現状では約700名ですが、未だ登録していないだけの人もいるということで、会員数は800~900名にはなるだろうと予想されています。
同学会では、将来的には1,000名を目指したいとのことでした。

 この後、応用物理学会会長の河田聡氏(大阪大学)が来賓の挨拶を行ない「応用物理学会としてもデリケートで悩ましい問題であったが、これからは対等の関係で光学の発展に努めたい。シンポジウムを拡充して、若い研究者・技術者が全体を見渡せるような情報が手に入るよう気を配ってほしい」と述べていました。

 続く日本光学会副会長の谷田純氏(大阪大学)は設立の経緯を報告、「今回の設立は持続的発展を目指した20年、30年先のための改革。学会は人がすべて、日本光学会を人を育てるところにしたい」と述べていました。

 引き続いてのシンポジウム講演は、東京大学の荒川泰彦氏が「量子ドット・フォトニック結晶ナノ共振器結合系における光学-固体共振器量子電気力学の発展-」、慶應義塾大学の斎木敏治氏が「ナノオプティクスのこれから-新しいアプローチを求めて-」、大阪大学の伊東一良氏が「誘導ラマン分光顕微鏡-非線形光学への期待をこめて-」、宇都宮大学の武田光夫氏が「シンセティック統計光学-波動場の揺らぎの制御と統計的秩序の生成-」、ニコンの市原裕氏が「高精細光学系開発における波面測定法の発展」、キヤノンの松田融氏が「すばる望遠鏡用主焦点補正光学系の開発」と続き、それぞれの最先端の研究・開発成果を紹介しました。
 
 シンポジウム終了後は情報交換会が行なわれ、祝福とこれからの期待について和やかな雰囲気の中、活発に議論が交わされていました。
 
 なお、日本光学会の事務局は板橋区役所に隣接する板橋区情報処理センターに置かれる予定です(正式には4月から)。
連絡先は以下の通り。

 一般社団法人 日本光学会
 〒173-0004 東京都板橋区板橋2-65-6 板橋区情報処理センター
 E-mail:info@myOSJ.or.jp

編集顧問:川尻多加志

 

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