8Kは優位なのか?

 10月7日(水)から10日(土)まで幕張メッセで開かれた「CEATEC JAPAN 2015」。今年の開催期間は、昨年より1日短い4日間だった。そのせいもあってか、登録来場者数は昨年の15,0912人から133,048人に減少した。
 東芝、ソニー、日立製作所など、これまで常連であった大手電機メーカーが出展を取り止めるなか、「CEATEC JAPAN」自体が曲がり角に来ていると評する向きもあるが、分社化が取り沙汰されているシャープは8K映像モニターなどを展示して、その技術力をアピールしていた。その他、目に付いた幾つかの展示を紹介する。

写真1 シャープのIGZO液晶パネルを用いた85型8K映像モニター。7,680×4,320画素、120Hz、12bit表示、最大輝度1,000cd/m2、コントラスト比100,000:1を実現した。新蛍光体を採用した独自のLEDバックライトシステムの搭載で、次世代色規格BT.2020のカバー率78%も達成している。この他、同社は4K液晶パネルの3原色のサブピクセルに黄色を加えることで色表現力を高め、さらに超解像技術を融合させ8K解像度を実現した「4K NEXT」も出展。これは8Kよりも買いやすい価格設定を狙ったものだ。どちらも近日発売予定。シースルーディスプレイやミラーディスプレイも多くの人の注目を集めていた。

写真2 世界初、次世代ディスク規格「Ultra HDブルーレイ」再生に対応したパナソニックのプレミアムディーガ。
「Ultra HDブルーレイ」は4K(3,840×2,160画素)映像を1秒間に60コマで高速表示でき、輝度ピークを従来の100nitから最大1,000~10,000nitまで拡大した高輝度HDR(ハイダイナミックレンジ)に対応、次世代色規格BT.2020にも対応するものだ。高効率動画圧縮技術HEVC(H.265)による最大100Mbpsの映像信号にも対応している。11月初旬発売予定だ。
 

写真3 QDレーザのレーザアイウェアは弱視の人の視覚支援機器として、来年3月の商品化を予定している。カメラから得た映像をRGBレーザービームで照射、それをMEMSミラーと反射ミラーを経由して直接網膜に投影するという仕組み。視力やピント位置に依存しないフォーカスフリー特性を活かしたものとなっている。同社では医療検査や作業支援用、さらにはスマートグラスとして順次商品化をして市場開発したいとしている。
 
 
 
写真4 JINSのアイウエアは「自分を見る」をコンセプトに開発されたセンシング・アイウエア。メガネとしての形状と機能はそのままに、独自開発の三点式眼電位センサーで八方向の視線移動とまばたきをリアルタイムでセンシング、六軸(加速度・角速度)センサーで体軸・体幹・歩行バランス・活動量を測定して、眠気や集中度、身体のバランスなど、生体データを取得できる。医療から行動分析まで、幅広い研究へ活用できる可能性を持つ。
 
写真5 アスカネットはAI(エアリアル・イメージング)プレートを用いた空中ディスプレイを出展。JTBプランニングネットワークのコンテンツ、船井電機のセンサー、メディアタージのアプリを用いて、1×1mの大型AIプレートで迫力ある空中結像とインタラクティブ操作をデモンストレーションした。同社のブースでは、インテルやNECソリューションイノベータ、NHKメディアテクノロジー、東京大学・篠田研究グループなどがAIプレートの応用事例も展示していた。
  
写真6 中国のBOEは、98型と110型の8K液晶ディスプレイを出展した。輝度は500cd、コントラスト比は1,000対1とのことだ。82型の10K液晶ディスプレイも出展していたが、こちらはアスペクト比を21:9にして10Kを実現している。

 かつて、我が国の液晶テレビは新興国の追い上げによって世界市場を奪われていった。今回出展されたBOEの8Kディスプレイを見ていると、デジタル技術の恐ろしさか、日本製にスペックの優位性はあると思われるが、8K製品もうかうかしていられないという感じを受ける。BOEのディスプレイは、今回のCEATECライフスタイル・イノベーション部門のグランプリを受賞しているのだ。「技術で勝って、ビジネスで負ける」と言われて久しいが、その原因はどこにあるのだろう。

 次回の「CEATEC JAPAN 2016」は、2016年10月5日(水)から10月8日(土)の4日間、幕張メッセで開催される。

編集顧問:川尻多加志

 

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