編集長の今月のコメント(2010年4月)

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編集長 川尻多加志

超精密加工・計測技術は各種ディスプレイ、メモリー、デジタルカメラなど、様々なデジタルAV機器等における光デバイス製造に使用されています。技術的な進展状況を見てみると、現在では超精密切削技術や研削技術、計測技術等の進歩によって、すでに10nmレベルの形状精度と1nmレベルの表面粗さ機械加工も可能になっているということです。
今月号の特集は、電子・光デバイスの超精密・マイクロ加工技術と計測技術に焦点をあて、研究開発の最新動向を紹介していただきました。企画をしていただいたのは中部大学・工学部の鈴木浩文教授です。お忙しい中を有り難うございました。超精密加工・計測技術は、製品のさらなる低価格化や高機能化等、競争力確保に必要不可欠なキーテクノロジーです。この技術進展が世界における日本製品の今後のプレゼンスの成否を握っているとも言って良いでしょう。
先月号の特集で取り上げた3Dテレビ、やはりというか、サムスン電子が日本製よりも安い3D対応テレビ投入を米国で発表しました。パナソニックのプラズマ方式は米家電量販店Best Buyで50型が2,500ドル。これに対し、サムスン電子は、最低価格のLEDを使わない液晶方式46型が1,700ドル(ちなみに韓国内では3,000ドル)、プラズマ方式は50型1,800ドルからで、LED液晶テレビは40型2,000ドルからの品揃えになっている。景気の良くない状況では、一般消費者はどうしても安いほうに行きがちです。例え画質や機能が上だとしても、細かい事を気にしない国の消費者には通用しません(中国の富裕層は高くても敢えてMade in Japanを求めますが)。日本メーカは3Dテレビを、韓国や台湾メーカに奪われた市場を取り戻す絶好のチャンスと捉えていました。サムスン電子は従来どおり価格競争に持ち込む戦術のようです。
3月4日付けの日経産業新聞に興味深い記事が載っていました。紹介します。日本鋼管を経て1994年から約10年間、サムスン電子の常務を務め、李健熙前会長の右腕として活躍した吉川良三・東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員がサムスンの強さの理由を語っています。以下、記事から抜粋・引用します。
サムスンは「日本が開発した製品を技術や機能の観点で分解して、次にそれらを組み立てていく。新興国には機能を削ぎ落とし価格を抑えるなど、製品ごとに松竹梅をそろえ適正価格で売る」、「韓国は日本のようにイノベーションは起こさないし、そのための基礎研究に興味がない。基礎研究は日本に任せて、デザインやマーケティングなど、販売に直結する領域に注力する。日本が隣国である地の利を活かし、知財に無頓着な日本から優秀な人材を引き抜くことができた」等々。
吉川氏は、日本企業に次のように忠告しています。「きりのない過剰品質は顧客にそっぽを向かれる」、「日本には危機感はあるが危機意識がない。喉もと過ぎれば熱さを忘れる。平時こそ危機意識を持ち次の一手を考えないといけない」、「今度は韓国から学ぶべきだ」と。

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