編集長の今月のコメント(2010年5月)

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編集長 川尻多加志

 光の波長より小さなものは光学顕微鏡では見えません。回折限界と言います。
ところが、金や銀といった貴金属にナノ構造を作りこんで、そこに光を照らすと電子と光が共鳴する表面プラズモン共鳴が起こって、表面近くでは飛躍的に電場が強くなります。この効果を応用すると回折限界を超える分解能が実現できたり、他にも様々な光学効果を格段に向上させることができると、各方面から注目を集めています。
表面プラズモン共鳴の応用としては、身近なところではガラスの表面に金属微粒子を塗って鮮やかな色を醸し出すステンドガラスが有名です。この他、自動車用の塗料などにも使われていますが、近年ではこれを光デバイスに応用しようという研究・開発が内外で活発化しています。
今月号の特集では、ナノフォトニクスとプラズモニクスを切り口として、ナノイメージング、ナノ光集積回路、バイオセンサ、有機太陽電池、磁気記録、細胞内分子観察などへの応用、さらに大気圧低温プラズマの産業応用にも焦点をあて、我が国のプラズモニクス研究を先導する大阪大学フォトニクス先端融合研究センターを中心とした研究者の方々に、最新の研究を紹介していただきました。
プラズモニクス研究は、本特集のご執筆者の一人でもある河田聡教授を始めとして、我が国の研究者が世界に先駆けた研究を行ない高い評価を得ています。基礎的な研究はもちろん、産業界と連携した応用研究にも期待したいと思います。
4月9日(金)、日本学術会議公開シンポジウム「先端フォトニクスの展望」が東京は六本木の日本学術会議講堂で開かれました。「光」というキーワードを持つ各学会の最先端の話題を集めた講演を行なって、光科学のインパクトやイノベーションを国内にアピールするとともに、次世代を担う若手研究者の育成、新しい産業やコミュニティーの創成推進を目的に開かれたものです。
当日の内容をざっと紹介しますと、日本女子大の小舘香椎子名誉教授がシンポジウムの趣旨を説明、続いて東大・荒川泰彦教授による「ナノ科学技術が拓く先端フォトニクス」、同じく東大・五神真教授の「先端レーザー技術による光物理学の展開」、阪大・河田聡教授が「プラズモニクス:機能と応用とその未来」、京大・野田進教授は「フォトニック結晶の現状と将来展望」、日立の小泉英明氏が「光トポグラフィがひらく未来」を講演されました。
講演会には予想を遥かに上回る約400名の方々が参加、別会場では若手研究者によるポスターセッションも開かれました。若手研究者が「光」という共通テーマのもとに集い、活発かつフレンドリーな雰囲気の中でディスカッションしていたのがとても印象的でした。
先端科学技術分野の研究は、その研究が進めば進むほど細分化され、研究自体は深く掘り下げられる一方、他分野との横断的交流が少なくなって行き、弊害として研究者の視野が狭くなりがちで、新しい発想も生まれ難くなるという話を良く聞きます。そのような観点からも、今回のようなイベントは光の分野で今後とても重要になって来るのではないでしょうか。

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