編集長の今月のコメント(2010年6月)

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20090114-kawajiri.JPG 編集長 川尻多加志

太陽電池にはシリコンや化合物半導体を用いたもの、さらには有機材料を用いたものなど、様々な種類が存在します。その中でCIGS系太陽電池は低コスト・高性能を両立できる太陽電池として注目を集め、既に商品化もされ、さらなる高性能化を目指す研究開発が内外で活発に行なわれています。今月号の特集ではこのCIGS系太陽電池にスポットライトをあててみました。企画していただいたのは、産業技術総合研究所・太陽光発電研究センターの仁木栄・副センター長です。ご執筆者の皆様、お忙しい中を有り難うございました。
特集の中でも触れられているように、CIGS系太陽電池の変換効率は研究室レベルの小面積セルで20%を達成しています。一方、市販製品レベルの集積型モジュールでは10~12%程度に留まっているのが現状です。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の作成した「2030年に向けた太陽光発電ロードマップ(PV2030+)」では、CIGS系太陽電池の2030年時点での変換効率目標を小面積セルで25%、モジュールで22%としています。その実現のためには、小面積セルと集積型モジュールの双方において革新的な効率化技術の開発が必要であり、特長である高い変換効率を活かした量産プロセスの確立が求められています。特集では、その最新状況を紹介していただきました。
地球環境を守る低酸素社会実現のためと、世界中で太陽光発電システムの導入が進められています。そこから生まれる巨大な利益を求め、数多くのメーカが市場獲得に凌ぎを削っています。今後はサムソンやLGといった韓国勢に加え、台湾のTSMCやAUOなども市場参入して来て、競争はますます激しさを増すでしょう。一方、フィード・イン・タリフによって急速に導入が進んだ国でも、中国製などの安い海外製品によって市場が奪われ、必ずしも制度が自国メーカの利益になっていないという指摘があります。我が国でもその点、要・注意というところでしょう。

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5月号の「DATA ROOM」でもお知らせしたように、総務省が発表した我が国のブロードバンド回線加入者数調査によると、2009年度の第3四半期(12月末時点)は、対前四半期比でFTTHが4.1%増、67万6,274加入増え、合計で1,719万5,696加入となりました。全ブロードバンド回線加入者数である3,170万9,084加入に占める割合は、約52.7%から約54.2%に増えました。
1四半期分で4.1%増えたということで、このままの伸び率で行くとして単純計算で2,000万加入を超えるのは1年ぐらい先になるのでしょうが、4.1%という伸び率が次第に低くなって行くことも考えられます。スピードアップを望みたいところですが、やはり何か魅力的な新しいアプリケーションが欲しいですね。
一方で「光の道構想」によって一挙にブロードバンド普及率100%を達成するという威勢の良い話も聞こえて来ます。学べば学ぶほどその重要性が分かったなんて後から言っても遅いのですから、最前線で世界と戦っている通信分野における研究開発競争力の今後がどうなるかまでを考え、真の意味での国益になる政策を考えて欲しいものです。

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