編集長の今月のコメント(2010年7月)

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編集長 川尻多加志

MEMS の実現とその研究・開発の進展によって、様々な分野における機器・装置の小型化や高性能化は大きく前進しました。 (財)マイクロマシンセンターは、MEMSの国内市場は2005年度で約4,400億円、2010年度は1兆1,700億円、2015年度には2兆4,000億円に達すると予測しています。
一方、DMDに代表される光MEMSもディスプレイや光通信を始めとして、多岐に渡る分野において研究・開発と応用が進みました。市場規模もMEMS全体に比べれば小さいものの2005年度で896億円、2010年度で2,047億円、2015年度には3,831億円と、順調に推移すると予測されています。
近年、先進諸国では単なる物質的な豊かさでなく、人がより健康的な生活を送れるかどうかという点に関心が集まっています。特に高齢化が急速に進む我が国では、対応する医療技術に期待が集まっており、その産業発展によって我が国の経済を大きく成長させることができるという声も上がっています。
バイオ技術は医療、環境、食品等が抱える様々な問題を解決する有効な手段と、内外で研究・開発が活発に進められています。特に医療分野では、個人の遺伝子情報に基づいた遺伝子治療などのオーダーメイド医療やゲノム創薬、生体情報センサや低侵襲治療が注目を集め、光MEMSはこれらの分野においての活躍が期待されています。
今月号の特集では九州大学・工学研究院機械工学部門の澤田廉士教授に企画していただき、いま注目の光応用バイオMEMSデバイスの研究・開発最新動向に焦点をあてました。海外に比べ規制が多く、それが日本企業の国際競争力の足かせとなっている現状を踏まえ、我が国の医療制度そのものの見直しも積極的に進めて欲しいものです。
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数々の危機を乗り越えて小惑星探査機「はやぶさ」が、7年の宇宙の旅を終え地球に戻ってきました。月以外の天体に探査機が着陸して帰還するのは世界初の快挙で、今回の成功は我が国の宇宙技術の高さを世界に示しました。
「はやぶさ」は小惑星「イトカワ」離陸後に燃料漏れを起こし制御不能となって通信が途絶しましたが、7週間後に微弱信号をとらえ周期的につながる僅かな時間を利用して復活に成功。しかし今度は推進力の強い化学エンジン12基が全て故障、これには長距離航行用のイオンエンジンを代用して乗り切りました。ところが、そのイオンエンジンも4基中3基が故障、これに対しては故障箇所の違う2基をつなぎ合わせ1基分にするという裏技でよみがえらせました。この我慢強くあきらめないという日本人の気質そのものの頑張りに、多くの賞賛の声が寄せられました。
ところが、後継機「はやぶさ2」の予算は、政権交代前の概算要求額17億円が、政権交代で実施される高校無償化に4,000億円近く掛かるしわ寄せを受け大幅に削られ5,000万円に、昨年11月の事業仕分けではさらに3,000万円に縮減されてしまいました(6月15日付読売新聞社説等)。
「はやぶさ」のあまりの人気と予算削減への批判に、政府は予算復活をほのめかしていますが、無駄と断定した科学技術の成果が出たとたん、姿勢が180度変わるのは如何なものでしょう。
「はやぶさ2」は目標とする小惑星と地球の位置関係などから2014~15年に打ち上げないと、次の機会は10年以上先になるということです。米国は日本の予算縮減の隙を縫うように既に「はやぶさ」予算の5倍以上の600~800億円規模の小惑星探査プロジェクトを進めています。「2位じゃ駄目なんでしょうか」ではなく、科学技術分野においても、ぜひとも学べば学ぶほどにその重要性を分かって欲しいものです。

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