編集長の今月のコメント(2010年8月)

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編集長 川尻多加志
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同一光源から発した光を二つ以上の異なる経路で重ねた時、その表面に単独の光では見ることのできなかった模様、干渉縞が現われます。1805年、ヤングによる干渉実験が行なわれ、これによって光の波動説が確立しました。その後、干渉計測はレンズや鏡面の検査に用いられるようになり、さらに19世紀末、マイケルソン干渉計を使って光速度と地球の自転は独立しているという事が実証されて、これは特殊相対性理論の基礎となりました。このように、干渉計測技術は人類の科学・技術の発展に大きく貢献して来ました。
一方、1960年にはレーザの発明がありました。このレーザを光源とすることによって、干渉計測技術は飛躍的な進歩を遂げます。その結果、測定対象も拡がって、レンズなどの光学部品だけではなく、機械部品の変形や振動の計測にまで用いられるようになりました。レーザドップラー速度計や光ファイバジャイロは、線速度や回転速度を検出することができます。デジタルホログラフィを用いた顕微鏡は、光学系が簡単で機械的な焦点調節機構も不要、生体組織やその動的変化の観察に威力を発揮します。さらにOCT(光コヒーレンストモグラフィ)や分光トモグラフィなどは、無侵襲で生体を計測できますので、医療やバイオテクノロジー分野で注目を集めています。
今月号の特集は光干渉計測の最新動向という切り口で、理化学研究所の名誉研究員でいらっしゃる山口一郎先生に企画立案をお願いし、各ご執筆者の方々には最新の研究をご紹介いただきました。干渉計測技術の応用分野は、今後ますます拡がると期待されています。
国内の太陽電池市場に、中国などからの割安な輸入品が続々と流入し始めているようです(7月9日付・日経産業新聞「エコ商品の今(6)」)。記事によれば、国産メーカの価格は1kWあたり70万円から高級品で65万円、海外メーカの安値攻勢に対抗して一部メーカが40万円台後半を打ち出したということですが、中国・浙江省に工場を持つソプレイソーラーは最近、結晶系太陽電池パネルを1kWあたり29万8,000円で売り出し、国内大手販売店グリーンテックが売り出す中国新興メーカの薄膜シリコン太陽電池は、光電変換効率が5%と低いものの12万7,000円(工事費除く)、カドミウムを用いる米国ファーストソーラーは10万円以下で急速にシェアを拡大させているそうです。
太陽電池も製造装置さえ買えば、結構のスペックのものが作れるターンキー商品になっているといいます。優れた機能や丈夫で長持ちという信頼性等を訴えても、目先の安さに目を奪われるというご時勢、日本メーカが世界市場でシェアを奪われたパターンはパソコンや液晶テレビ、携帯電話と、枚挙にいとまがありません。
政府は太陽光発電普及政策を、これまでの補助金制から割高な価格で全量を買い取る制度にシフトする予定です。政局によって不透明な部分もありますが、フィード・イン・タリフ制度を導入したヨーロッパでも太陽光発電導入量は飛躍的に増えたものの、中国などの安い海外製品に市場を奪われ自国製品が思ったほど伸びないという現実を見る時、環境問題を単なる理想論で捉えるのではなく、したたかな戦略・戦術を持って事に当たる姿勢が必要だと実感させられます。

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