編集長の今月のコメント(2011年5月)

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編集長 川尻多加志

ディスプレイの今後はどうなるのでしょうか。今より高精細で低消費電力、軽量で薄型というのが大きな流れでしょう。特に携帯電話や最近流行のスマートフォン、タブレット型端末には、これらの性能向上が強く求められています。これに3D表示、それも眼鏡を用いない裸眼方式が加われば、言う事なしという感じでしょうか。
現状の携帯用ディスプレイの主流は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイといったところですが、一方で米国において普及が進む電子ブックに使われているのが電子ペーパー。こちらも注目を集めています。電子ペーパーの表示方式としては、電気泳動方式やコレステリック液晶を用いたものなどがありますが、基本的には白黒表示や静止画表示です。少なくとも現状ではフルカラーの動画表示に最適という訳には行かないようです。
一方で、曲がるディスプレイの実現は長年の夢でした。究極の携帯用ディスプレイの形がそこにあると言っても良いかもしれません。電車の中で新聞や雑誌を読むように、みんながフレキシブルディスプレイを手にしている。そんな光景が近い将来実現すると、その研究に注目が集まっています。
フレキシブルディスプレイの最有力候補はやはり有機ELディスプレイでしょう。しかしここで問題となるのが、アクティブマトリックス駆動用の薄膜トランジスタをどうやって基板となるプラスチックフィルムの上に作り込むかです。現状の液晶ディスプレイのように薄膜トランジスタにシリコンを使おうとした場合、プロセス温度が高いため熱に弱いプラスチック基板に直接形成するのが難しいという問題があります。そこで有機半導体の登場です。有機半導体なら低温プロセスで作る事ができ、この問題をクリアできます。さらに、低コストで省エネルギーな印刷法を用いて大面積の素子を作ることもできます。「有機材料」、「印刷」、「フレキシブル」、この三つをキーワードとした研究・開発がいま注目を集めています。
今月号の特集では次世代ディスプレイとして注目の集まるフレキシブルディスプレイと有機エレクトロニクス技術の最新動向に焦点をあててみました。企画していただいたのは山形大学・有機エレクトロニクス研究センター・副センター長の時任静士教授です。各ご執筆者の方々には最新の研究・開発をご紹介いただきました。お忙しい中を有り難うございました。
東日本大震災から1ヶ月以上が経ちました。震災によって多くの人命と人々の生活が奪われ、経済も大打撃を受けました。被災地の産業拠点は破壊され、今も原子力発電所から出る放射性物質と電力不足が経済活動再開の足かせとなっています。復興には長い年月がかかるでしょう。
一方で、様々なイベントを自粛しようという動きもありました。しかし、過度な自粛は経済を萎縮させ、返って復興を遅らせる事にもなりかねません。むろんドンチャン騒ぎは良くありません。大規模停電を起こさないためにもピーク時の節電は必要です。しかし、通常の経済活動と被災者の方々に対する「気持ち」は分けて考えても良いと思います。普通に生活する事こそが、震災との戦いに勝利するための、我々が直ぐにでもできる復興支援策ではないでしょうか。

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