編集長の今月のコメント(2011年7月)

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編集長 川尻多加志

※文中の青い文字にはリンクが貼ってありますので、クリックしてご覧下さい。
今月号の特集では光を用いたバイオイメージングを取り上げました。企画していただいたのは静岡大学・工学部の川田善正教授です。以下、川田先生の「総論」から引用させていただきます。光学顕微鏡の歴史は古く、その発明は16世紀頃と言われています。その光学顕微鏡にいま、第三の波が起こりつつあるそうです。まず第一の波では、高輝度ハロゲン光源やケラー照明系、収差補正高NA対物レンズといった要素技術が進展することによって、その性能向上が図られました。次の第二の波では、光学顕微鏡の世界にレーザーが導入され、レーザー走査顕微鏡が登場します。
そして第三の波では、例えば新しい蛍光プローブの開発によって光制御機能やマルチカラー化を実現したり、蛍光の飽和励起や誘導放出などを積極的に利用する手法が開発されています。この他、電子線を用いて微小な光源を励起したり、光で超音波を励起するなど、光以外の物理を取り込むことによって分解能を飛躍的に向上させようという研究・開発も進められています。
特集では、これら新しい原理に基づいて高分解化・高機能化が進む光学顕微鏡とバイオイメージング応用の最新情報を紹介していただきました。川田先生を始め、各ご執筆者の皆様方、お忙しい中を有り難うございました。
ドイツに続いてイタリアも脱原発を表明しました。ただし、両国とも陸続きの隣国フランスが原発で作った電力を買うわけですから、本当の意味での脱原発と言えるのか、少し疑問です。それに、隣国との根本的な政治的・歴史的価値観の違いや外交・安全保障面で対立していない点など、我が国とは置かれた環境がずいぶん違うように思えます。
我が国でも反原発の声が大きくなっています。こんな時、原発推進はもちろん現状維持でも口にしたら、それこそ非国民扱いでしょう。これだけの事故ですから、センシティブになるのは理解できるのですが、敢えて批判される事を覚悟で言えば、今は少し冷静さが必要なのではないでしょうか。
かつてエイズという未知の病気が突然出現し、その原因も感染の仕組みも分からなかった時、患者に触ることも一緒の空気を吸うことさえ恐れ、魔女狩りのような雰囲気の中で、患者は言われなき差別を受けました。その後、エイズが科学的に解明されたことで、人々はようやく冷静さを取り戻します。
急激な脱原発で電気料金が大幅に上がったり、必要な電力が得られない状況が続けば、製品コストは高くなり、市場へ安定供給もできないので、企業は国際競争力の低下を回避するため、生産拠点を海外に移転せざるを得なくなります。社会保障費が増大するなか、産業の空洞化は景気の後退、失業者の増加、税収の落ち込みといったマイナスのスパイラルを起こす可能性が高いという事だけは覚悟しておかなくてはならないでしょう。
一方で、大衆受けを狙った、後先を考えない思い付き発言に自己陶酔する政治家。結果として実現できないから先送りになって結局何も進まない。我が国は瀬戸際に立っています。

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