グリーンで安全な情報社会の実現を

 5月19日(月)と20日(火)の両日、東京大学・本郷キャンパスの伊藤国際学術研究センターにおいて、東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構主催による「ナノ量子情報エレクトロニクス連携研究拠点」プロジェクト公開シンポジウム「ナノ量子情報エレクトロニクスの新展開」が開催されました(共催:東京大学大学院理学系研究科附属フォトンサイエンス研究機構、光電子融合基盤技術研究所、後援:光産業技術振興協会)。

 「ナノ量子情報エレクトロニクス連携研究拠点」は、平成18年度科学技術振興調整費(現・地域産学官連携科学技術振興事業費補助事業)先端融合領域イノベーション創出拠点の形成プログラムの一つとして採択されたプロジェクト。3年目の平成20年度に、当初採択された9件のプロジェクトが4件に絞られるという非常に厳しい再審査が行なわれたが、それを見事に通過、平成27年度までの10年間プロジェクトとして進行中のものです。

 プロジェクトの目標はズバリ、将来のグリーンで安全な情報社会の実現に向けて、超ブロードバンド、超安全性、超低消費電力を備えた情報システム基盤技術の確立。このプロジェクトを推進する中核的研究組織が「東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構」です。平成18年10月に東京大学が総長室直轄の学内横断組織として設立したもので、研究機構長は荒川泰彦・生産技術研究所教授。同大学が持つナノ技術、量子科学、ITの「知」を結集し、海外を含めた学外研究組織とも強い連携を図りつつ、ナノ量子情報科学技術分野における世界拠点形成を目指し、その充実化を図っているとの事です。

 プロジェクトではこれまで、拠点形成を通じて量子ドットを始めとするナノ技術、量子科学、ITの先端領域の融合による次世代デバイスの開発を推進してきたが、より高度な量子暗号通信や量子計算機の動作実証に向けた量子情報技術の確立も推進中で、量子ドット太陽電池など、エネルギーデバイスの基盤研究も行なっています。

 具体的な研究活動はシャープ、NEC、日立製作所、富士通研究所、QDレーザの五つの協働企業が東大内に各「東大企業ラボ」を設置、特定研究テーマを幹にしながら、広く東京大学内にシーズを探索する、いわゆる「T型連携」のもと、場とビジョンを共有した産学協働研究を推進しています。現在では複数企業間の連携研究への発展など、連携スタイルも含めて、成果を着々と生み出しており、特にベンチャー企業であるQDレーザはビジネスモデルを含め、広範な分野へ量子ドットレーザの市場展開を図るとともに、イノベーション創出の実績を築きつつあるとの事です。

 今回の公開シンポジウムでは、富士通研究所、日立製作所、シャープ、NEC、QDレーザの各代表者が研究開発とイノベーションへの取り組みについて講演を行なうとともに、機構に参画している研究者による最新の研究成果が報告され、まさに世界に冠たる我が国のナノ量子情報エレクトロニクスの一大拠点における最先端の研究情報が披露されました。
 中でも初日に行なわれたノーベル物理学賞受賞者・江崎玲於奈氏による特別講演「新しいリサーチフロンティアの開拓」は、先進的な研究に関わる方々にとっては、とても示唆に富む内容で、その中でも特に興味深かったのは、講演最後に江崎氏が述べられた「ノーベル賞を取るために、してはならない5カ条」。その5か条、以下に紹介します。

 第1:今までの行き掛かりやしがらみに捉われてはいけない。
    真実を見失い、創造力は発揮できない。
 第2:大先生を尊敬し、教えを受けるのはよいが、心酔してはいけない。
    自由闊達な自分を失う。
 第3:情報の大波の中で、自分に無用なものまでも抱え込んではいけない。
    役立つものだけを取捨選択する。
 第4:自分の主張を貫くため、戦うことを避けてはいけない。
 第5:いつまでも初々しい感性と飽くなき好奇心を失ってはいけない。

 「人生には理不尽な事を言われる時もある。その時は戦え!」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。

編集顧問:川尻多加志

 

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