網膜にレーザ

6月6日(金)と7日(土)の両日、東京大学駒場リサーチキャンパス公開が行なわれました。初日はあいにくの大雨、帰りには靴の中までびしょ濡れになってしまったのですが、何か面白いものはないかなと、兎にも角にも行ってまいりました。

展示ブース風景 正門から入って左手、しばらく歩くと、生産技術研究所のE棟1階のエレベータホールに、前々回のブログでも取り上げたナノ情報エレクトロニクス研究機構と光電子融合研究センターの展示ブースを発見。
ブースでは、量子ドットやフォトニック結晶などを用いた電子・光子制御に関する研究を始め、ナノ光デバイスや高効率太陽電池などへの応用研究を紹介していましたが、何やら奥のテーブルの前で、眼鏡型のウェアラブルディスプレイを掛けている人がいます。近くに行って話を聞いてみると、それは同研究機構とQDレーザが共同で開発した「レーザアイウェア」という名前のウェアラブル情報端末でした。

ウェアラブル情報端末「レーザアイウェア」

ウェアラブル情報端末「レーザアイウェア」

使われているのは液晶?それとも有機EL?と思って訊ねると、レーザを網膜に走査しているとの事。今回、「レーザアイウェア」の基盤技術開発に成功して、装着感や外観が通常の眼鏡と違和感のない眼鏡型情報端末の製品化に目処をつけたという事で、お披露目に至ったそうです。

レーザ網膜走査型ディスプレイは、1990年代の初めに提案されたもので、液晶等を用いたものに比べて、高輝度・高色再現性・広視野角という特長を持っています。また、自在なサイズと自在な位置画像を得る事ができ、さらには近眼や老眼など、装着した人の視力を選ばないフォーカスフリーという特長も持っています。ただ、これまでに数社が開発してきましたが、実用レベルの製品は未だ現れていないというのが現状だそうです。

今回の「レーザアイウェア」は、ナノテクを駆使して独自に開発したレーザ網膜走査光学系を基盤技術としていて、その光学系は赤・緑・青の三原色半導体レーザからのレーザ光をMEMSミラーで反射・走査して、瞳孔を通して網膜上に映像を描写するという仕組みになっています。現状のサイズは全幅162mm、通常の眼鏡と変わらない装着感で完全なシースルー画像も得られ、他方式に比べてサイズ、省電力、コスト面で優位性が高いとの事です。

網膜にレーザとなると、気になるのが安全性ですが、現状の照射パワーはJIS/IECの基準で、設計上本質的に安全性が求められるクラス1に属しているそうです。今後は、大きな電流が入ると壊れてしまうフェールセーフな出力の小さな半導体レーザを搭載して、より安全性を高めるとしています。

製品化については、レーザ網膜走査光学系の小型化・低消費電力化をさらに進めて、2015年末には作業支援用として有線タイプのものを、2017年末には民生用として無線タイプのものを製品化して、市場開拓を進めて行く計画だそうです。

昔、「見えすぎちゃって困るの」というコマーシャルソングがありましたが(これ知っている人はかなりの歳だと思いますが)、この手のもの「頑張っているんだけど、もう少し・・・」と内心思ってしまうものも多い中、今回のはちょっとインパクトがありました。普及を期待してます。

編集顧問:川尻多加志

 

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